第一種電気工事士試験 / 令和8年度上期 学科試験 / 問7
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令和8年度上期 学科試験 問7 解説 配電線の電力損失

設問図

図のように, 定格電圧 V [V], 消費電力 P [W], 力率 cosφ(遅れ)の三相負荷に電気を 供給する配電線がある。この配電線の 電力損失[W]を示す式は。 ただし, 配電線の電線 1 線当たりの抵抗 は r [Ω] とし, リアクタンスは無視する。

選択肢図
  1. イ. P^2・r / V^2cos^2φ ✓ 正答
  2. ロ. P・r / Vcosφ
  3. ハ. P^2・r / V^2cosφ
  4. ニ. P・r^2 / Vcos^2φ

解説

三相負荷の電力の公式 P=3VIcosϕP = \sqrt{3} V I \cos \phi を用いて線電流 II を導き出し、それを三相3線式の電力損失の式 PL=3I2rP_L = 3 I^2 r に代入して整理することで解答を導きます。

三相交流の消費電力から電流を導き出す

この問題を解くための第一歩は、配電路を流れている電流(線電流) II を、与えられた条件である消費電力 PP、電圧 VV、力率 cosϕ\cos \phi を使って表すことです。

三相交流負荷において、消費電力 P[W]P [W] は以下の式で定義されます。

P=3VIcosϕP = \sqrt{3} V I \cos \phi

この式は、線間電圧 VV と線電流 II、そして電圧と電流の位相差を示す力率 cosϕ\cos \phi の関係を示しています。ここで、私たちが知りたいのは電線に流れている電流 II ですので、式を II について解くと次のようになります。

I=P3VcosϕI = \frac{P}{\sqrt{3} V \cos \phi}

この II が、抵抗 rr を持つ電線の中を流れることで、熱として電力が失われることになります。

三相3線式における電力損失の構造

次に、配電路全体でどれだけの電力が失われるかを考えます。電線に電流が流れると、抵抗 rr によって I2rI^2 r の電力が熱(ジュール熱)として消費されます。これが「電力損失」です。

図を見ると、この配電路は三相3線式であり、3本の電線それぞれに抵抗 rr が存在していることがわかります。したがって、配電路全体の電力損失 PLP_L は、1線あたりの損失を3倍したものになります。

PL=3×I2×r=3I2rP_L = 3 \times I^2 \times r = 3 I^2 r

単相2線式であれば 2I2r2 I^2 r ですが、三相3線式では「3」をかける必要があるという点が、この問題における重要なポイントです。

数式の代入と整理のプロセス

先ほど求めた電流 II の式を、電力損失 PLP_L の式に代入して、選択肢にある形へ整理していきます。

PL=3×(P3Vcosϕ)2×rP_L = 3 \times (\frac{P}{\sqrt{3} V \cos \phi})^2 \times r

括弧の中を二乗します。

PL=3×P2(3)2V2cos2ϕ×rP_L = 3 \times \frac{P^2}{(\sqrt{3})^2 V^2 \cos^2 \phi} \times r

分母にある (3)2(\sqrt{3})^233 になるため、式は以下のようになります。

PL=3×P23V2cos2ϕ×rP_L = 3 \times \frac{P^2}{3 V^2 \cos^2 \phi} \times r

ここで、分子にある 33 と分母にある 33 が打ち消し合い(約分され)ます。その結果、残った要素をまとめると次の式が得られます。

PL=P2rV2cos2ϕP_L = \frac{P^2 r}{V^2 \cos^2 \phi}

これが、三相3線式配電路における電力損失を示す式です。よって、選択肢の「イ」が正解となります。

損失を最小化するための電気設計の視点

この数式は単なる計算問題の答え以上の重要な意味を持っています。式を見ると、電力損失 PLP_L は電圧 VV の二乗および力率 cosϕ\cos \phi の二乗に反比例していることがわかります。

  1. 電圧を高めると損失が減る 分母に V2V^2 があるため、例えば電圧を2倍に上げると、電力損失は4分の1に減少します。これが、発電所から送電する際に非常に高い電圧(特高)を用いる大きな理由の一つです。
  2. 力率を改善すると損失が減る 分母に cos2ϕ\cos^2 \phi があるため、力率が悪い(値が小さい)と損失が急激に増大します。工場などで進相コンデンサを設置して力率を1に近づける「力率改善」は、この電力損失を抑え、配電効率を高めるために不可欠な技術です。

第一種電気工事士として現場に携わる際、なぜ高い電圧で送電し、なぜ力率の管理が求められるのかという物理的な根拠が、まさにこの数式に凝縮されています。

参考リンク

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