三相3線式の電圧降下公式 ΔV=3I(rcosθ+xsinθ) を用い、与えられた数値を代入して線電流 I を求めます。力率 cosθ=0.8 のとき、 sinθ=0.6 となるため、括弧内の計算が 1.0 になり、簡潔な計算式へと導けます。
三相3線式における電圧降下の基本式
電気工事士の試験において、電圧降下の計算は非常に頻出するテーマです。三相3線式の場合、受電端電圧を Vr、送電端電圧を Vs とすると、その差である電圧降下 ΔV は以下の近似式で表されます。
ΔV=Vs−Vr=3I(rcosθ+xsinθ)
ここで、I は線電流、r は電線1線当たりの抵抗、x は電線1線当たりのリアクタンス、cosθ は負荷の力率です。この式に現れる 3 は、単相ではなく三相回路の線間電圧を扱っていることに由来します。
力率とリアクタンス成分の整理
問題文では力率(cosθ)が 80%、つまり 0.8 と与えられています。計算式には sinθ も必要ですが、これは以下の三角関数の関係から導き出せます。
sin2θ+cos2θ=1
sinθ=1−0.82=1−0.64=0.36=0.6
電気計算の問題では、cosθ=0.8 のとき sinθ=0.6、あるいは cosθ=0.6 のとき sinθ=0.8 という組み合わせが非常によく使われます。この組み合わせを覚えておくと計算スピードが格段に上がります。
線電流を導き出す計算プロセス
与えられた値を公式に代入していきます。
電圧降下 ΔV=300 V
抵抗 r=0.8 Ω
リアクタンス x=0.6 Ω
力率 cosθ=0.8
無効係数 sinθ=0.6
300=3×I×(0.8×0.8+0.6×0.6)
括弧の中を先に計算します。
0.8×0.8=0.64
0.6×0.6=0.36
0.64+0.36=1.0
すると、式は以下のように非常にシンプルになります。
300=3×I×1.0
300=3I
これを I について解くと、
I=3300
選択肢に合わせるために分母を払う(有利化する)と、
I=3×3300×3=33003=1003 [A]
したがって、正解はロの 1003 となります。
電圧降下計算の重要性と実務への繋がり
この問題は、単に公式に数値を当てはめる能力だけでなく、交流回路におけるインピーダンスと力率の関係を正しく理解しているかを問うています。
実際の高圧配電線路や工場内の幹線設計において、電圧降下を許容範囲内に収めることは極めて重要です。電圧が下がりすぎると、電動機のトルク不足や電子機器の誤作動、あるいは照明のちらつき(フリッカ)の原因となります。第一種電気工事士は、負荷の大きさと距離、そして電線の太さに応じた電圧降下を予測し、適切な電線選定や変圧器のタップ調整を行う知識が求められます。
特に、抵抗成分だけでなくリアクタンス成分(電線同士の配置や距離によって生じる)が無視できない高圧回路や大電流回路では、この公式を用いた検討が欠かせません。この問題を通じて、電気の「質」を守るための基本的な計算手法を習得することができます。
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