令和7年度 下期 学科試験 問32 解説 受電設備図の名称
問32から問34までは,下の図に関する問いである。 図は,一般送配電事業者の供給用配電箱(高圧キャビネット)から自家用構内を経由して,地下1階受電室に施設する屋内キュービクル式高圧受電設備(JIS C 4620適合品)に至る電線路及び低圧内幹線設備の一部を表した図である。この図に関する各問いには,4通りの答え(イ,ロ,ハ,ニ)が書いてある。それぞれの問いに対して,答えを1つ選びなさい。 〔注〕図において,問いに直接関係のない部分等は,省略又は簡略化してある。
- イ
- ロ ✓ 正答
- ハ
- ニ
解説
この問題は、高圧受電設備の施工技術に関する知識を問うものです。不適切な選択肢を選ぶために、高圧ケーブルの支持強度の考え方と、なぜ樹脂製が不可なのかという物理的側面から判断します。
高圧ケーブルの支持と短絡電流
高圧受電設備において、ケーブルを支持する部材は、単にケーブルの重さを支えるだけではなく、短絡事故が発生した際に生じる強大な電磁力に耐えられる必要があります。
短絡事故時には、ケーブルに流れる電流が平常時の数十倍から数百倍に達します。この電流によってケーブル間に生じる電磁力(吸引力または反発力)は、非常に大きな衝撃として支持材に加わります。樹脂製のクリートは、一般的な低圧屋内配線などには適していますが、短絡電流による強大な物理的衝撃には耐えられず、破損してケーブルが飛散したり、短絡が継続・拡大して二次災害を引き起こすリスクがあります。
したがって、高圧ケーブルを支持する際は、金属製のクリートや強固な構造を持つ専用の支持金具を使用し、ケーブルの動きを確実に拘束する必要があります。
各選択肢の検討プロセス
この問題は、施工における「材料の強度」と「設置環境」の適合性を評価するものです。
イ:高圧ケーブルの防護管として合成樹脂被覆鋼管を使用するのは、機械的保護と防食の観点から適切な施工です。
ロ:防水鋳鉄管の末端において、建物内側の結露や浸水に対する措置(水抜き)が適切であれば、防水装置を省略することは実務上の合理的な判断として認められます。
ハ:接地線の立上り部分(機械的損傷を受けやすい場所)において、硬質ポリ塩化ビニル電線管(VE管)で保護することは、防食性と保護性能の両面から一般的な施工方法です。
ニ:これが不適切です。ピット内は湿気が多く保守点検も容易ではない場所であり、高圧ケーブルに短絡が生じた際、樹脂製クリートは電磁力に耐えきれず破壊される可能性が高いです。高圧引込ケーブルには、耐衝撃性と絶縁耐力を考慮した強固な支持材が求められます。
実務現場における材料選定の考え方
試験の教育的意図として、高圧受電設備は「万が一」の短絡事故時に、いかに設備を保護し、被害を最小限に抑えるかという「協調」と「信頼性」の概念が重視されています。
現場で配線材料を選定する際、単に「ケーブルが固定できればよい」と考えるのではなく、「短絡電流が流れた瞬間に何が起きるか」を想像することが重要です。この問題は、高圧という高いエネルギーを扱う電気工事士として、材料の機械的強度の限界を正しく理解しているかを問うています。特に電気室やピット内のような重要な箇所では、安価な汎用品ではなく、高圧配線専用の堅牢な部材を選定する能力が実務においても必須となります。