令和7年度 下期 学科試験 問11 解説 変圧器の鉄損
変圧器の鉄損に関する記述として, 正しい ものは。
- イ. 電源の周波数が変化しても鉄損は一定である。
- ロ. 一次電圧が高くなると鉄損は増加する。 ✓ 正答
- ハ. 鉄損はうず電流損より小さい。
- ニ. 鉄損はヒステリシス損より小さい。
解説
鉄損とは、変圧器の鉄心内で発生する損失のことであり、主にヒステリシス損と渦電流損の和で表されます。電圧を上げると鉄心内の磁束密度が上昇し、これら二つの損失がどちらも増加するため、鉄損全体が増加するという関係を理解していれば即答できる問題です。
鉄損を構成する二つの要素
鉄損(Pi)は、ヒステリシス損(Ph)と渦電流損(Pe)の合計です。
ヒステリシス損は、磁性体が磁化される過程で、磁気ヒステリシス現象により鉄心内に熱が発生する損失です。これは磁束密度の最大値の約1.6乗から2乗に比例します。一方、渦電流損は、鉄心内に生じる誘導起電力によって循環電流(渦電流)が流れ、それが熱となる損失です。これは磁束密度の最大値の2乗に比例します。
電圧を上げると、ファラデーの電磁誘導の法則により、鉄心を貫く磁束密度が大きくなります。磁束密度が大きくなれば、ヒステリシス損も渦電流損も比例して増加するため、結果として鉄損は増加することになります。
正誤判定のプロセス
イについて、周波数が変化すると磁束密度や渦電流損の発生状況が変化するため、鉄損は一定ではありません。
ハとニについて、ヒステリシス損と渦電流損はどちらも鉄損を構成する要素です。これらは鉄心材料や周波数、板厚によって比率が大きく変わり、どちらが必ずしも小さいとは断定できません。したがって、比較して小さいと決めつける選択肢は誤りです。
対して、ロは電圧と磁束密度の物理的な関係に基づいた正当な記述です。変圧器の電圧を上げることは、鉄心内の磁気的な負荷を増やすことに等しく、熱損失が増えるという仕組みを捉えるのがこの問題の核心です。
実務における変圧器の管理
この知識は、変圧器の運用や保守管理の場面で非常に重要です。例えば、変圧器に定格を超える電圧を印加し続けると、鉄損の増加により鉄心の温度が上昇します。温度上昇は絶縁材料の劣化を早め、最悪の場合は変圧器の焼損事故につながります。
また、鉄損は変圧器が励磁されている限り(一次側に電圧がかかっている限り)、負荷電流の有無にかかわらず常に発生する無負荷損です。省エネルギーの観点からは、変圧器を適切に選定し、過電圧状態を避けて鉄損を最小限に抑えることが、効率的な電力供給の基本となります。試験においては、単なる暗記ではなく、電圧と磁束、そして熱エネルギーの変換プロセスとして現象をイメージしておくことが、応用問題への対応力につながります。