令和5年度 学科試験 問4 解説 交流回路の電源電圧
図のような交流回路において, 電流I=10 A, 抵抗 R における消費電力は 800 W, 誘導性 リアクタンス XL=16 Ω, 容量性リアクタンス XC=10 Ωである。この回路の電源電圧V [V] は。
- イ. 80
- ロ. 100 ✓ 正答
- ハ. 120
- ニ. 200
解説
この問題は、以下の3ステップで解くことができます。
- 消費電力の式 を用いて、未知の抵抗値 を求める
- インピーダンスの式 を用いて、回路全体の合成インピーダンス を求める
- オームの法則 を用いて、電源電圧 を算出する
抵抗値とインピーダンスの算出
まず、与えられた情報から抵抗 を求めます。消費電力 W、電流 A であることから、 となります。
次に、この回路は抵抗 、誘導性リアクタンス 、容量性リアクタンス が直列に接続されたRLC直列回路です。この回路の合成インピーダンス は、抵抗成分とリアクタンス成分()のベクトル和として求めます。 、 より、リアクタンス成分は です。 したがって、 となります。
最後に、回路全体の電圧 を求めます。 となり、正解はロとなります。
交流回路におけるベクトル的な考え方
電気工事士試験において直列回路を扱う際、単に値を足し算してはいけません。なぜなら、抵抗での電圧降下とリアクタンスでの電圧降下は、位相が 度ずれているからです。
リアクタンスには「電流よりも位相が 度進む(コンデンサ)」、「遅れる(コイル)」という性質があるため、単純な合計ではなく、ピタゴラスの定理を用いた直角三角形の斜辺として合成インピーダンスを導く必要があります。この「ベクトル的に考える」という手法は、力率改善や電圧降下の計算など、実務でモーターや大型電気機器を扱う際の基礎となる重要な考え方です。
試験問題の意図と実務への繋がり
この問題は、RLC直列回路という電気の最も基本的なモデルを通じて、電力(有効電力)、インピーダンス、電圧の関係を正しく理解しているかを問うています。
現場では、単相交流回路において力率が悪化している場合、コンデンサを追加することで と を打ち消し合い、インピーダンスを小さくして電流を最適化する「力率改善」が行われます。この問題は、その計算の理論的背景そのものです。リアクタンスの差を計算して全体のインピーダンスを算出する手順を身につけることは、将来的に配電設備の設計やトラブルシューティングを行う上での強力な武器になります。