第一種電気工事士試験 / 令和5年度 学科試験 / 問3
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令和5年度 学科試験 問3 解説 交流回路の皮相電力

設問図

図のような交流回路において, 抵抗 12 Ω, リアクタンス 16 Ω, 電源電圧は 96 V である。 この回路の皮相電力[V・A]は。

  1. イ. 576
  2. ロ. 768
  3. ハ. 960 ✓ 正答
  4. ニ. 1344

解説

この問題は、並列回路の各枝に流れる電流を個別に求め、そのベクトル和から全電流を算出して皮相電力を導きます。計算手順は以下の通りです。

  1. 抵抗 R=12ΩR=12\Omega に流れる電流 IR=96/12=8[A]I_R = 96 / 12 = 8\text{[A]} を求める
  2. リアクタンス X=16ΩX=16\Omega に流れる電流 IL=96/16=6[A]I_L = 96 / 16 = 6\text{[A]} を求める
  3. 全電流 I=IR2+IL2=82+62=10[A]I = \sqrt{I_R^2 + I_L^2} = \sqrt{8^2 + 6^2} = 10\text{[A]} を求める
  4. 皮相電力 S=VI=96×10=960[VA]S = VI = 96 \times 10 = 960\text{[V}\cdot\text{A]} を計算する

並列回路における電流の性質

交流の並列回路では、各負荷にかかる電圧は共通ですが、流れる電流の位相が異なります。抵抗に流れる電流は電圧と同相ですが、誘導性リアクタンスに流れる電流は電圧よりも位相が90度遅れます。そのため、単なる算術和(8+6=14[A]8 + 6 = 14\text{[A]})で全体の電流を求めることはできません。

この電流の関係は、直角三角形の辺の比として捉えることができます。底辺を抵抗の電流、高さをリアクタンスの電流とすると、斜辺が全体の電流となるピタゴラスの定理(三平方の定理)が適用できるのです。今回の場合、6:8:106:8:10 の比率となるため、非常に計算しやすい設定になっています。

なぜ皮相電力を求める必要があるのか

皮相電力とは、回路に供給される「見かけ上の電力」のことです。回路に電圧 VV と電流 II が供給されているとき、その積 VIVI は供給能力の限界を示しており、電力設備(変圧器や配線)の容量選定において最も重要視されます。

実務においては、この値をもとに過負荷にならないかを確認したり、力率を改善するためのコンデンサの容量を算出したりします。皮相電力という概念は、有効電力(実際に消費される仕事)と無効電力(行き来するだけの電力)の合計をベクトル的に表現する起点となる非常に実用的な指標です。

回路構造を見極める重要性

この問題で陥りやすい罠が、直列回路と並列回路の混同です。問題の図をよく見ると、電源に対して抵抗とリアクタンスが並列に接続されています。もしこれらを直列と勘違いしてインピーダンス Z=122+162=20ΩZ = \sqrt{12^2 + 16^2} = 20\Omega を先に求め、そこから電流 I=96/20=4.8[A]I = 96/20 = 4.8\text{[A]} と算出してしまうと、選択肢にない値や誤った正解を導いてしまいます。

試験では「回路図の接続形態」を確認する癖をつけることが合格への近道です。並列回路であれば「電圧が共通」、直列回路であれば「電流が共通」という基本原則を常に意識してください。

参考リンク

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