令和3年度 上期 筆記試験 問8 解説 支線の許容張力
図のように取り付け角度が30°となるように支線を施設する場合, 支線の許容張力をTs=24.8 kN とし, 支線の安全率を2とすると, 電線の水平張力Tの最大値[kN]は。
- イ. 3.1
- ロ. 6.2 ✓ 正答
- ハ. 10.7
- ニ. 24.8
解説
この問題は、支線にかかる張力を、電線の水平張力と支線の傾斜角度の関係から導き出す問題です。手順は以下の通りです。
- 支線の引張荷重 を計算します。安全率は「許容張力 / 実際の荷重」であるため、 [kN] となります。
- 電柱頂部で力の釣り合いを考えます。支線の引張力のうち、電線の水平張力 と打ち消し合う成分は、支線の角度を としたとき、 で求められます。
- [kN] が答えとなります。
支線の物理的な役割と力の分解
支線は、電柱が受ける電線の張力による曲げモーメントを相殺するために施設されます。物理的な観点からは、電柱頂部の一点に働く力の釣り合いとして捉えます。
電線が引く水平方向の力 に対して、支線は電柱を斜め下方に引くことで抵抗します。このとき、支線の張力を とすると、支線にかかる力は「水平方向の成分 」と「垂直方向の成分 」に分解できます。電柱が倒れないためには、水平方向において という釣り合いが成り立つ必要があります。
ここで重要なのは、角度の定義です。問題図のように「電柱(垂直面)」と「支線」のなす角が である場合、水平成分を求めるには を用います。もし「地面」と「支線」のなす角が与えられていれば を使うことになるため、図を見てどの角度が与えられているかを正確に把握することが計算ミスを防ぐ鍵です。
安全率という考え方
電気設備技術基準において、支線の安全率は原則として2.5以上(場合により2.0以上)と定められています。これは、材料が切断に至る限界の力(引張荷重)に対して、実際に許容する力をどの程度低く抑えるかという指標です。
今回の計算で安全率2で割った数値(12.4 kN)をベースにしたのは、その値が「支線が耐えられる実質的な限界(使用荷重)」を意味するからです。現場では経年劣化や風圧荷重などの不確定要素があるため、理論上の限界値ギリギリで設計することはなく、安全率というマージンを持たせることが必須となります。
実務における支線の設置
この計算は、実際の配電工事において適切な支線の太さや種類を選定する際の基礎となります。もし計算結果の6.2 kNよりも大きな張力が電線にかかる環境(例えば、強風地域や電線の条数が多い場所)であれば、より強度の高い支線を用いるか、設置角度を調整して分担できる力を増やす必要があります。
試験的な問題では「計算結果を導く」ことが目的ですが、実務では「この支線でどれだけの電線張力までカバーできるのか」という逆算的な思考も行われます。架空配電路の設計において、電柱が倒壊しないように力を分散させる支線は、非常に重要な安全装置であることを理解しておきましょう。