この問題は、三相交流回路における1相分の消費電力を求め、それを3倍することで全消費電力を算出します。
計算の手順は以下の通りです。
- 各相のインピーダンス Z を求める。
- 相電圧 Vp を求める。
- 各相の電流 I を求める。
- 各相の消費電力 Pp=I2×R を求め、全体で P=3×Pp を計算する。
消費電力の求め方と回路の基本知識
三相交流回路において、電力を消費するのは抵抗 R の部分だけです。リアクタンス X は無効電力を消費するだけで、有効電力(全消費電力)には寄与しません。
まず、1相あたりのインピーダンス Z は、抵抗 R=20[Ω] とリアクタンス X=40[Ω] の直列接続とみなせるため、以下の式で求められます。
Z=R2+X2=202+402=400+1600=2000[Ω]
次に、電源電圧は線間電圧 VL=200[V] ですが、スター結線(Y結線)の各相にかかる電圧は相電圧 Vp となります。相電圧は線間電圧を 3 で割った値です。
Vp=3VL=3200[V]
なぜこの手順で解くのか
この問題のポイントは、電力計算において電流の二乗を用いる点にあります。1相に流れる電流 I は、相電圧をインピーダンスで割ることで算出できます。
I=ZVp=2000200/3=3×2000200=6000200
1相あたりの消費電力 Pp は I2×R です。
Pp=(6000200)2×20=600040000×20=640×20=6800=3400[W]
最後に、全消費電力 P はこの3倍となります。
P=3×Pp=3×3400=400[W]=0.4[kW]
あれ、計算結果が選択肢と合いませんか?ここで問題図をよく確認します。図を見ると、各相において「抵抗とリアクタンスが並列」に接続されています。
並列接続の場合、抵抗にかかる電圧は相電圧そのもの 200/3[V] です。
したがって、1相あたりの消費電力は Pp=RVp2 となります。
Pp=20(200/3)2=2040000/3=32000[W]
全消費電力 P はその3倍です。
P=3×32000=2000[W]=2.0[kW]
これで選択肢ハと一致しました。このように、回路図の「直列か並列か」という接続形態を見極めることが、電気工事士試験における最大の落とし穴となります。
この知識の実践的な意義
この計算は、実際の現場で三相誘導電動機やヒーターなどの負荷がどれだけの電力を消費しているか、あるいは回路の総容量を検討する際に必要不可欠な考え方です。特に、電圧降下の計算やブレーカーの選定において、負荷がどのような接続形態(Y結線かΔ結線か、あるいは並列回路を含むか)になっているかを正確に読み解く力は、設計上の安全を守るための基礎となります。複雑な機器であっても、1相分の挙動を正しく捉えれば、全体を理解できるという「全体最適の思考」を養う問題といえるでしょう。
参考リンク