令和2年度 第一種電気工事士 筆記試験 問3 解説 RL直列回路の電流
図のように, 角周波数がω=500rad/s, 電圧 100Vの交流電源に, 抵抗R=3Ωとインダク タンスL=8mHが接続されている。回路に流 れる電流Iの値[A]は。
- イ. 9
- ロ. 14
- ハ. 20 ✓ 正答
- ニ. 33
解説
この問題は、RL直列回路における電流値を求める典型的な計算問題です。以下の3ステップで解くことができます。
- 誘導性リアクタンス を計算する。
- インピーダンス を求める。
- オームの法則 に当てはめて電流を算出する。
交流回路における抵抗とリアクタンスの役割
直流回路では抵抗のみが電流を制限しますが、交流回路には抵抗のほかにコイル(インダクタンス)やコンデンサ(静電容量)が存在し、これらも電流の流れにくさを決定します。
コイルに交流電流が流れると、電流の変化を妨げるような起電力が発生します。この「交流に対する抵抗成分」を誘導性リアクタンス と呼び、単位はオーム です。 という式から分かる通り、角周波数 が高いほど、またインダクタンス が大きいほど、電流は流れにくくなります。
直列回路の合成インピーダンスという考え方
抵抗 とリアクタンス が直列に接続されている場合、単に として足し合わせることはできません。これらは電流に対する位相の振る舞いが異なるためです。
抵抗の電圧は電流と同相ですが、コイルの電圧は電流より位相が90度進みます。この関係をベクトル(または複素数)で扱うと、直角三角形の斜辺を求める形になります。これが という式になる理由です。本問では 、計算結果の を代入すると、辺の比が 3:4:5 の直角三角形が完成するため、 と簡潔に求まります。
実務現場における交流回路計算の立ち位置
第一種電気工事士の試験において、この計算は単なる数学のパズルではありません。実務ではモーターや変圧器など、インダクタンス成分を持つ多くの機器を扱います。
たとえば、電気設備の設計やトラブルシューティングを行う際、「電圧降下」や「配線の太さの選定」を検討する場面では、このインピーダンス計算が不可欠です。インダクタンスを無視して抵抗分だけで計算してしまうと、実際の電流値や電圧降下の計算が大きく狂い、保護装置の誤作動や機器の故障を招く恐れがあります。
この問題の教育的意図は、RL直列回路という最もシンプルな交流モデルを通じて、交流回路特有の「抵抗とリアクタンスを組み合わせたインピーダンス」という概念を正しく理解しているかを確認することにあります。この基礎をマスターすることで、より複雑な三相回路や力率改善の計算といった、より実務に近い分野への理解がスムーズになります。