平成30年度 第一種 筆記試験 問39 解説 電気工事業法
電気工事業の業務の適正化に関する法律に おいて, 電気工事業者の業務に関する記述と して, 誤っているものは。
- イ. 営業所ごとに, 絶縁抵抗計の他, 法令に定められた器具を備えなければならない。
- ロ. 営業所ごとに, 法令に定められた電気主任技術者を選任しなければならない。 ✓ 正答
- ハ. 営業所及び電気工事の施工場所ごとに, 法令に定められた事項を記載した標識を掲示しなければならない。
- ニ. 営業所ごとに, 電気工事に関し, 法令に定められた事項を記載した帳簿を備えなければならない。
解説
この問題を解くためのポイントは、「電気工事業の業務の適正化に関する法律(電気工事業法)」と「電気事業法」という、電気に関する二つの主要な法律が定める義務の違いを正確に理解することです。各選択肢がどちらの法律に基づく義務かを判断すれば、誤りを見つけられます。特に、「電気主任技術者」の選任義務が、電気工事業法ではなく電気事業法に基づくものであるという知識が決定打となります。
電気工事業法が定める事業者の義務
電気工事業法は、一般用電気工作物や自家用電気工作物の電気工事の欠陥による災害の発生を防止し、公共の安全を確保することを目的とした法律です。この法律は、電気工事業者が適正な業務を行うための様々な義務を定めています。
器具の備え付けと標識の掲示
選択肢イとハは、電気工事業者が安全かつ信頼性の高い工事を行うための具体的な義務に関するものです。
- イ. 営業所ごとに, 絶縁抵抗計の他, 法令に定められた器具を備えなければならない。 これは正しい記述です。電気工事業法第19条において、電気工事業者は営業所ごとに、電気工事の作業に必要な絶縁抵抗計、接地抵抗計、低圧検電器、高圧検電器(高圧電気工事を営む場合)などの器具を備え付けることが義務付けられています。これらの器具は、工事の完成後や点検時に、電気設備の安全性を確認するために不可欠です。
- ハ. 営業所及び電気工事の施工場所ごとに, 法令に定められた事項を記載した標識を掲示しなければならない。 これも正しい記述です。電気工事業法第20条に基づき、電気工事業者は、その業務を行う営業所や電気工事の施工場所ごとに、登録票や届出がされている旨、氏名または名称、主任電気工事士の氏名などを記載した標識を掲示しなければなりません。これは、工事の透明性を高め、消費者や関係者に対する責任の所在を明確にするための措置です。
帳簿の備え付け
- ニ. 営業所ごとに, 電気工事に関し, 法令に定められた事項を記載した帳簿を備えなければならない。 この記述も正しいです。電気工事業法第21条では、電気工事業者は営業所ごとに、電気工事ごとに請負年月日、工事の種類、設置場所、施行年月日、主任電気工事士の氏名などの事項を記載した帳簿を備え付け、これを保存することが義務付けられています。この帳簿は、工事の履歴管理、品質管理、そして万が一の事故発生時の原因究明に重要な役割を果たします。
「電気主任技術者」選任義務の管轄
選択肢ロが誤っている理由の中心は、電気主任技術者の選任義務が、電気工事業法ではなく「電気事業法」に基づくものだからです。
- ロ. 営業所ごとに, 法令に定められた電気主任技術者を選任しなければならない。 この記述は誤りです。電気主任技術者は、電気事業法において、発電所、変電所、送電線路、配電線路、需要設備(工場やビルなどの自家用電気工作物)といった電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督を行う者として定められています。電気事業法第43条により、これらの電気工作物を設置する者(主に電気事業者や自家用電気工作物の設置者)に対して、電気主任技術者を選任することが義務付けられています。 一方、電気工事業法で選任が義務付けられているのは、電気工事の作業を実地に管理する「主任電気工事士」であり、これは電気工事士の資格を持つ者が務めます。電気工事業者が電気工事の請負業務を行う際に、直接的に電気主任技術者の選任義務を負うわけではありません。電気工事業者が、自社の事業活動として自家用電気工作物を設置・運用する場合(例えば、自社の工場に高圧受電設備を設置する場合など)は、電気事業法に基づいて電気主任技術者を選任する義務が生じますが、それは「電気工事業者だから」ではなく、「自家用電気工作物の設置者だから」という別の理由によるものです。
この問題から学ぶべき法律の役割分担
この問題は、電気に関する複数の法律がそれぞれ異なる目的と適用範囲を持っていることを理解することの重要性を示しています。
- 電気工事業法:電気工事の「施工」の適正化と安全確保を目的とし、電気工事業者の登録、資格者の配置(主任電気工事士)、器具の備え付け、標識の掲示、帳簿の記載などを義務付けています。
- 電気事業法:電気の「供給」と電気工作物の「保安」を目的とし、電気事業の許認可、電気工作物の技術基準、そして電気工作物の保安監督者としての電気主任技術者の選任などを定めています。
第一種電気工事士として電気工事業に携わる上では、これら二つの法律の目的と、それぞれがどのような義務を課しているのかを明確に区別して理解しておくことが、法令遵守の観点からも、安全な電気工事を行うためにも極めて重要です。