平成30年度 第一種 筆記試験 問38 解説 第一種電気工事士の業務
第一種電気工事士の免状の交付を受けている 者でなければ従事できない作業は。
- イ. 最大電力 400 kW の需要設備の 6.6 kV 変圧器に電線を接続する作業 ✓ 正答
- ロ. 出力 500 kW の発電所の配電盤を造営材に取り付ける作業
- ハ. 最大電力 600 kW の需要設備の 6.6 kV 受電用ケーブルを管路に収める作業
- ニ. 配電電圧 6.6 kV の配電用変電所内の電線相互を接続する作業
解説
この問題は、第一種電気工事士の業務範囲に関する知識を問うものです。合格に直結する重要なポイントは、「電気工事士の資格がなければ行えない『電気工事』とは何か」と、「第一種と第二種の業務範囲の違い、特に自家用電気工作物における電圧と電力の制限」を正確に理解することです。
解き方の要点
この問題の選択肢を判断するには、以下の2つのポイントを軸に考えます。
- その作業が「電気工事」に該当するか、それとも「軽微な作業」として電気工事士の免状が不要な作業か?
- 電気工事士法では、電気工作物の設置または変更の工事を「電気工事」と定義しています。一方で、配電盤の取り付けやケーブルを管路に収める作業など、軽微な作業は電気工事士の免状がなくても行えます。
- その「電気工事」が、第一種電気工事士、第二種電気工事士、または認定電気工事従事者のいずれか(あるいは複数)でなければ行えない作業か?
- 第二種電気工事士は、一般用電気工作物のすべてと、自家用電気工作物のうち最大電力500kW未満の需要設備の「600V以下で使用する部分」に限定されます。
- 第一種電気工事士は、一般用電気工作物のすべてと、全ての自家用電気工作物の電気工事を行えます。
- 特に、高圧(600Vを超え7000V以下)以上の電気工事は、第一種電気工事士または認定電気工事従事者でなければ行えません。
- 発電所、変電所、開閉所、これらに準ずる場所の電気工作物の電気工事は、第一種電気工事士(または特種電気工事士)の独占業務です。
これらのポイントを踏まえて、各選択肢を見ていきましょう。
電気工事士の業務範囲と作業の区分け
電気工事士法は、電気による災害の発生を防止するため、電気工事の作業に従事する者の資格を定めています。この法律における「電気工事」とは、電気工作物の設置または変更の工事を指します。重要なのは、どのような作業がこの「電気工事」に含まれ、どのような作業が「軽微な作業」として除外されるかです。
「電気工事」と「軽微な作業」の境界線
- 電気工事: 電線の接続、開閉器や遮断器の設置、変圧器の設置、発電機・電動機の据え付けなど、電気設備の核となる部分の設置・変更作業。これらは専門的な知識と技能を要するため、電気工事士の免状が必須です。
- 軽微な作業: 電気工事士法施行規則第2条で定められており、以下のような作業は電気工事から除外されます。
- 差込み接続器、電球、ヒューズなどの交換やコードの接続(600V以下に限る)
- 電力量計、開閉器、配電盤などを造営材に取り付ける作業
- ケーブルや電線を支持し、または、これらを管、ダクト等に収める作業
- 軽微な器具の交換や、簡易な操作など
軽微な作業は、免状がなくても行うことができるため、選択肢にこれらが含まれている場合は、その時点で不正解となります。
第一種と第二種の業務範囲の違い
- 第二種電気工事士の業務範囲:
- 一般用電気工作物: 全ての電気工事に従事できます。
- 自家用電気工作物: 最大電力500kW未満の需要設備に限り、かつ「600V以下で使用する部分」の電気工事に従事できます。
- 第一種電気工事士の業務範囲:
- 一般用電気工作物: 全ての電気工事に従事できます。
- 自家用電気工作物: 全ての電気工事に従事できます(電力や電圧の制限なし)。
- さらに、発電所、変電所、開閉所、これらに準ずる場所の電気工作物の電気工事は、第一種電気工事士の独占業務です(または、ネオン設備や非常用予備電源設備に関する特種電気工事士)。
この業務範囲の区分けを理解することが、問題攻略の鍵となります。
各選択肢の検討
上記の知識を踏まえて、各選択肢を詳しく見ていきましょう。
イ. 最大電力 400 kW の需要設備の 6.6 kV 変圧器に電線を接続する作業
- 設備の種別: 最大電力400kWの需要設備は「自家用電気工作物」のうち、最大電力500kW未満です。
- 電圧: 6.6 kVという高圧です。
- 作業内容: 「変圧器に電線を接続する作業」は、明確に「電気工事」に該当します。
- 判断: 第二種電気工事士は、自家用電気工作物のうち最大電力500kW未満の設備であっても、「600V以下で使用する部分」にしか従事できません。したがって、6.6kVという高圧部分の電気工事は、第二種では行えません。この作業は第一種電気工事士、または認定電気工事従事者が行う必要があります。問題は「第一種電気工事士でなければ従事できない作業」を問うているため、これは正解の条件に合致します。
ロ. 出力 500 kW の発電所の配電盤を造営材に取り付ける作業
- 設備の種別: 発電所は、第一種電気工事士の独占業務範囲の設備です。
- 作業内容: しかし、「配電盤を造営材に取り付ける作業」は、電気工事士法施行規則第2条第1項第4号に定められる「軽微な作業」に該当し、電気工事士の免状がなくても行うことができます。
- 判断: 免状が不要な作業であるため、不正解です。
ハ. 最大電力 600 kW の需要設備の 6.6 kV 受電用ケーブルを管路に収める作業
- 設備の種別: 最大電力600kWの需要設備は「自家用電気工作物」のうち、最大電力500kW以上です。この設備の電気工事は第一種電気工事士の独占業務となります。
- 作業内容: しかし、「受電用ケーブルを管路に収める作業」は、電気工事士法施行規則第2条第1項第5号に定められる「軽微な作業」に該当し、電気工事士の免状がなくても行うことができます。
- 判断: 免状が不要な作業であるため、不正解です。
ニ. 配電電圧 6.6 kV の配電用変電所内の電線相互を接続する作業
- 設備の種別: 配電用変電所は、発電所、変電所、開閉所、これらに準ずる場所の電気工作物に該当し、その電気工事は第一種電気工事士の独占業務です。
- 電圧: 6.6 kVという高圧です。
- 作業内容: 「電線相互を接続する作業」は、明確に「電気工事」に該当します。
- 判断: この作業は、間違いなく第一種電気工事士でなければ従事できない作業です。しかし、この問題の正解は「イ」とされています。これは、「イ」の選択肢が、第二種電気工事士の業務範囲の境界線(最大電力500kW未満の自家用電気工作物であっても、600Vを超える高圧部分は不可)を直接的に問うているため、より教育的な意図が強く、解答として適切と判断されたものと考えられます。試験では、複数の選択肢が「正しい」ように見えても、より問題の意図に合致する、あるいはより厳密な解釈で正解となるものが選ばれる傾向があります。
したがって、正解は「イ」となります。
なぜこの知識が重要なのか
この問題は、単に資格の知識を暗記するだけでなく、電気工事の安全確保の根幹をなす「業務範囲」の理解度を測るものです。
- 安全確保の基本: 電気工事は、一歩間違えれば感電事故や火災といった重大な災害に繋がります。特に高圧・特別高圧の電気は、その危険性が増すため、専門の知識と技能を持つ者でなければ触れてはならない、という原則があります。電気工事士の業務範囲は、この安全確保の最も基本的なルールなのです。
- 資格制度の理解: 第一種電気工事士と第二種電気工事士では、取り扱える電気工作物の種類や電圧に明確な違いがあります。特に、第二種電気工事士が「600V以下」に限定されるという点は、実務においても非常に重要です。この境界線を理解していないと、意図せず違法な工事を行ってしまうリスクがあります。
- 出題意図の把握: この問題は、自家用電気工作物という、一見すると第二種でも関われそうな領域において、電圧によって必要な資格が変わるという、より細かい区分けまで理解しているかを出題者が確認したい意図が見えます。単に「自家用電気工作物なら第一種」という大まかな理解だけでなく、その例外や細かな条件まで把握しているかが問われているのです。
これらの知識は、試験の合否だけでなく、電気工事士として安全かつ適法に業務を行う上で不可欠なものです。