平成30年度 第一種 筆記試験 問25 解説 工具の用途
工具類に関する記述として,誤っているものは。
- イ. 高速切断機は,といしを高速で回転させ鋼材等の切断及び研削をする工具であり,研削には,といしの側面を使用する。 ✓ 正答
- ロ. 油圧式圧着工具は,油圧力を利用し,主として太い電線などの圧着接続を行う工具で,成形確認機構がなければならない。
- ハ. ノックアウトパンチャは,分電盤などの鉄板に穴をあける工具である。
- ニ. 水準器は,配電盤や分電盤などの据え付け時の水平調整などに使用される。
解説
この問題は、電気工事の現場で使われる基本的な工具に関する知識、特に安全な使用方法を問うものです。誤っている記述を見つけることが求められています。
解き方と判断のポイント
この問題では、各選択肢に挙げられている工具の用途や特徴について、正確な知識があるかが問われます。特に、安全に関わる誤った操作については見逃さないように注意しましょう。
選択肢イ:「高速切断機は、といしを高速で回転させ鋼材等の切断及び研削をする工具であり、研削には、といしの側面を使用する。」
- 高速切断機(ディスクグラインダーの一種)がといし(砥石)を高速回転させて切断・研削を行う、という前半は正しい記述です。
- しかし、「研削には、といしの側面を使用する」という部分が誤りです。といしは外周面(先端や円周部分)で切削・研削を行うように設計されており、側面は強度が弱く、無理な力がかかると破損や破砕の危険性が非常に高まります。労働安全衛生規則などでも、といしの側面使用は原則として禁止されています。
- したがって、この選択肢が誤りです。
選択肢ロ:「油圧式圧着工具は、油圧力を利用し、主として太い電線などの圧着接続を行う工具で、成形確認機構がなければならない。」
- 油圧式圧着工具は、手動では難しい太い電線の圧着に油圧を利用する工具であり、正しい記述です。
- また、「成形確認機構」とは、適切な圧着が完了したことを確認するための仕組み(例:ラチェット機構により、所定の力で圧着されないとハンドルが開かないなど)で、確実に良好な接続を行うために非常に重要です。これも正しい記述です。
選択肢ハ:「ノックアウトパンチャは、分電盤などの鉄板に穴をあける工具である。」
- ノックアウトパンチャは、分電盤やボックスの鉄板にきれいな丸穴をあけるための工具です。パンチとダイを組み合わせて穴を開けるため、バリが少なく、正確なサイズの穴を開けることができます。正しい記述です。
選択肢ニ:「水準器は、配電盤や分電盤などの据え付け時の水平調整などに使用される。」
- 水準器(レベル)は、その名の通り、据え付ける機器が水平になっているかを確認するための工具です。配電盤や分電盤を水平に設置することは、見た目の美しさだけでなく、機器の安定性や動作の正確性にも関わるため重要です。正しい記述です。
以上の判断から、選択肢イが誤っている記述となります。
高速切断機(といし切断機)の安全な使用方法
高速切断機、あるいはディスクグラインダーと呼ばれる工具は、金属や石材の切断、研削、研磨などに幅広く使われる非常に便利な工具です。しかし、その高速回転ゆえに、誤った使い方をすると重大な事故につながる危険性も高い工具でもあります。
といしの構造と危険性
といし(砥石)は、研磨材を結合剤で固めて作られています。このといしには、外周面で加工することを前提とした強度設計がされています。
- 外周面の使用: 切断砥石であれば薄い外周部で切断を、研削砥石であれば厚みのある外周部で削るのが正しい使い方です。この面には強力な遠心力と加工による負荷がかかるため、十分な強度が持たされています。
- 側面の使用の禁止: といしの側面は、外周面に比べて強度が著しく低く、薄く設計されています。ここに加工圧力をかけると、といしが割れたり、粉砕して破片が高速で飛散したりする危険性があります。飛散したといしの破片は、作業者や周囲の人に致命的な傷害を与える可能性があります。
- 労働安全衛生規則: 日本の労働安全衛生規則では、研削盤や切断機に使用するといしの側面使用は原則として禁止されており、安全衛生教育でもこの点が強調されます。
電気工事の現場では、露出配管の切断や、配電盤内部のバリ取りなど、様々な場面で高速切断機を使用する機会があります。そのため、正しい知識と安全な使用方法を習得することが、事故防止のために不可欠です。
その他の工具に関する補足知識
油圧式圧着工具と成形確認機構
電気工事において、電線と端子を接続する「圧着接続」は、信頼性の高い電気経路を確保するために非常に重要な作業です。特に太い電線では、手動式の圧着工具では十分な圧着力を得ることが難しいため、油圧式圧着工具が使用されます。 「成形確認機構」は、圧着作業が不完全なまま終わってしまうことを防ぐための安全装置です。この機構は、所定の圧着力がかかるまでハンドルが開かない、あるいは圧着完了時に「カチッ」という音で知らせるなど、確実に圧着が完了したことを作業者が確認できるように設計されています。不完全な圧着は、接続部の発熱や断線、ひいては火災の原因となるため、この機構の有無は接続信頼性に直結します。
ノックアウトパンチャ
分電盤や制御盤、配線用ボックスの鉄板にケーブルを通すための穴を開ける際に、ノックアウトパンチャは非常に重宝します。電動ドリルで穴を開けることも可能ですが、正確な円形を保ち、バリを少なく、そして比較的大きな径の穴を開けるにはノックアウトパンチャが適しています。手動式と油圧式があり、板厚や穴径によって使い分けられます。
水準器
配電盤や分電盤、コンセントボックスなどを壁面や床に据え付ける際、それらが水平・垂直に設置されていることは、見た目の美しさだけでなく、機器内部の部品への不必要なストレスを避け、長期間安定して機能させるために重要です。水準器(気泡管式レベル、レーザーレベルなど)は、この「水平・垂直」を正確に確認するための基本的な測定工具です。
電気工事における工具知識の重要性
第一種電気工事士試験では、このような基本的な工具の知識が問われることで、単に理論や法規だけでなく、実際の現場作業における安全性や作業品質に対する理解度を測ろうとしています。特に、高速回転する工具や、高圧力を扱う工具など、危険を伴う可能性のある工具については、正しい使用方法や安全管理の知識が非常に重要になります。誤った知識は重大な事故につながるため、試験対策を通じて正確な知識を身につけることが求められます。