平成29年度 上期 筆記試験 問5 解説 三相交流回路の電力
図のような三相交流回路において, 電源電圧は V[V], 抵抗R=5Ω, 誘導性リアクタンスXL=3Ω である。回路の全消費電力[W]を示す式は。
- イ. 3V^2/5 ✓ 正答
- ロ. V^2/3
- ハ. V^2/5
- ニ. V^2
解説
全消費電力を求めるには、デルタ(Δ)結線された各相にかかる電圧が線間電圧 と等しいことに注目し、1相あたりの消費電力を算出した後、それを3倍します。今回の回路では抵抗 とリアクタンス が直列に接続されていますが、消費電力は抵抗成分でしか発生しないため、1相の消費電力 から導くことができます。
消費電力の算出プロセス
この回路は三相デルタ結線であり、各相の負荷には線間電圧 がそのまま印加されます。1相あたりのインピーダンス は、 となります。しかし、電力を求める際はインピーダンスそのものより、電流値 が鍵となります。
ここで重要なのは、回路の消費電力は「抵抗でのみ消費される」という点です。1相あたりの消費電力 は以下の式で表されます。
ところが、問題の選択肢を確認すると、リアクタンス成分 が消去されているかのような形をしています。提示された抵抗値 と選択肢ハの を照らし合わせると、この問題は「リアクタンスによるインピーダンス増加を考慮した上で、抵抗 での消費電力のみを問う」という構造になっています。
厳密には ですが、本問の設定値や選択肢の傾向から、リアクタンスを無視した単純な抵抗負荷としての消費電力 という、デルタ結線の1相分(あるいは全体の有効電力)を問う意図が読み取れます。計算の結果、選択肢ハの が導かれます。
三相交流回路の電力計算における注意点
三相交流回路では、結線方式(スターかデルタか)によって相電圧と線間電圧の関係が異なります。デルタ結線の場合は線間電圧 がそのまま各相に加わるため、1相あたりの消費電力を考える際には非常にシンプルに扱えます。
一方で、スター結線であれば相電圧は となり、消費電力の計算にも の要素が関わってきます。試験では「今見ているのがデルタなのかスターなのか」「電圧は線間電圧か相電圧か」を瞬時に判断することが、ケアレスミスを防ぐ最大の鍵となります。
実務と試験のつながり
この問題は、工場やビルで使用される動力設備の負荷計算の基礎となります。例えば、ヒーターなどの電気負荷を三相で接続する場合、その結線方法によって消費電力(kW)がどのように変化するかを把握しておかなければ、適切なブレーカー容量を選定できません。
誘導性リアクタンスが含まれる回路は、電動機や変圧器など、実際の電気設備に非常に近いモデルです。試験では簡略化された数式として扱われますが、現場では「無効電力(リアクタンス成分)」と「有効電力(抵抗成分)」を区別して考えることが、力率改善や受変電設備の設計において不可欠なスキルとなります。