平成29年度 上期 筆記試験 問4 解説 交流回路の電流計算
図のような交流回路において,電源電圧120V, 抵抗20Ω,誘導性リアクタンス10Ω,容量性リアク タンス30Ωである。図に示す回路の電流I[A]は。
- イ. 8
- ロ. 10 ✓ 正答
- ハ. 12
- ニ. 14
解説
この問題は、並列回路における各枝の電流を個別に求め、それらをベクトル合成することで全体の電流を算出します。手順は以下の通りです。
各枝の電流をオームの法則で求める [A] [A] [A]
リアクタンス電流の合成 誘導性電流 と容量性電流 は位相が180度異なるため、差し引きします。 [A]
全体電流 のベクトル合成 抵抗電流 と合成リアクタンス電流 は直交するため、三平方の定理を用います。 [A]
並列回路における電流の位相関係
交流回路では、負荷の種類によって電圧と電流の位相が異なります。抵抗(R)では電圧と電流の位相が同じですが、コイル(L)では電流が電圧より90度遅れ、コンデンサ(C)では電流が電圧より90度進みます。
並列回路においては、すべての枝に同じ電圧が加わります。そのため、各枝の電流の位相は、その素子の特性に依存します。コイルに流れる は基準となる電圧ベクトルに対して下向き(遅れ)、コンデンサに流れる は上向き(進み)として扱います。これらが逆向きであるため、単純な足し算ではなく、大きさの差を取る必要があるのです。
ベクトル図を描く思考プロセス
問題を解く際は、まず頭の中で、あるいは余白にベクトル図をイメージすることが重要です。
まず、抵抗電流 を基準(水平方向)に配置します。次に、コイルの電流 を下方向に、コンデンサの電流 を上方向に書き込みます。このとき、 と は真っ直ぐな線分上で反対方向を向いていることがわかります。この2つの合成は単純な引き算となり、その結果得られたベクトル と、水平方向の を底辺・高さとする直角三角形を完成させます。斜辺が求めたい全体の電流 となるため、三平方の定理が適用できるという流れです。
交流回路計算の意義
この問題は、複雑なRLC並列回路を解くための基本形です。実務においてこの知識は、動力設備における力率改善の設計に不可欠です。
例えば、工場内のモータ(誘導性負荷)が多くなると遅れ力率が悪化しますが、そこにコンデンサ(容量性負荷)を並列に接続することで、電源から供給される無効電流を相殺し、全体の電流を小さく抑えることができます。この問題で から を差し引いて電流が小さくなる現象は、まさに現場で行われている「力率改善」の原理そのものです。電気工事士として、コンデンサがどのように回路電流に影響を与えるかを理論的に理解しておくことは、設備の効率的な運用を考える上での基礎体力となります。