平成27年度 筆記試験 問20 解説 ケーブルの劣化
高圧架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルにおいて, 水トリーと呼ばれる樹枝状の劣化が生じる箇所は。
- イ. 銅導体内部
- ロ. 遮へい銅テープ表面
- ハ. ビニルシース内部
- ニ. 架橋ポリエチレン絶縁体内部 ✓ 正答
解説
水トリー現象は、高圧ケーブルの絶縁材料である架橋ポリエチレン(XLPE)に水分と電界が共存することで発生する劣化です。したがって、選択肢の中から絶縁体そのものを指しているものを選べば正解にたどり着けます。
水トリー現象のメカニズム
高圧ケーブルにおいて最も重要な役割を果たすのが、導体を包み込んでいる架橋ポリエチレン絶縁体です。この絶縁体の中に、施工時のキズや不純物、あるいは経年劣化による微細な隙間が存在していると、そこに外部から浸入した水分が溜まります。
この状態で高い電圧(電界)がかかると、水分が集まっている箇所で局部的に電界が集中します。その結果、絶縁体内部で電気的なストレスが加わり続け、まるで樹木の枝のように絶縁破壊が進行していきます。この見た目から「水トリー(water tree)」と呼ばれています。この現象が進行すると、最終的には絶縁破壊を引き起こし、ケーブルの短絡や地絡事故に至ります。
誤答選択肢の検討
・銅導体内部:電流が流れる金属部分であり、絶縁体ではないため水トリーは発生しません。 ・遮へい銅テープ表面:電界を遮へいし、漏電を防ぐための金属層です。水分の浸入経路にはなりますが、劣化の主体は絶縁体内部です。 ・ビニルシース内部:ケーブルの最も外側にある保護層であり、機械的な損傷からケーブルを守る役割です。水トリーのような電気化学的な樹枝状劣化は絶縁体特有の現象です。
実務現場における意味合い
電気工事士としてこの知識が必要とされるのは、主に高圧ケーブルの保守・点検業務です。高圧受電設備において、ケーブルは長期間の使用に耐えることが求められますが、湿気の多い場所や適切に端末処理がされていない場合、水トリーが発生しやすくなります。
例えば、ケーブルの端末処理で防湿処理が不完全であったり、接続箱に浸水があったりすると、そこから架橋ポリエチレン内部へ水分が浸透していきます。現場では、定期的な絶縁抵抗測定や、より高度な診断手法としてtanδ試験(誘電正接試験)などを行い、絶縁体の劣化兆候を見逃さないことが重要です。試験問題としては単なる知識を問うものですが、現場では事故を未然に防ぐための重要な診断基準の一部となります。