令和7年度 下期 学科試験 問23 解説 レーダーの偽像
PPI方式のレーダー装置の画面に偽像が現れるとき、 考えられる原因として誤っているものはどれか。次 のうちから選べ。
- 1. アンテナ指向性にサイドローブがある。
- 2. レーダー装置のアンテナの位置が自船の煙突や マストより低い。
- 3. 付近にスコールをもつ大気団がある。
- 4. 自船と平行して大型船が航行している。 ✓ 正答
解説
レーダー画面に本来存在しない映像(偽像)が現れる原因を問う問題です。消去法で考える際、レーダーの反射原理に基づいて「物理的にありえない像」と「環境や障害物による誤表示」を区別することがポイントです。
偽像が発生する主なメカニズム
レーダーの偽像(False Echo)には、電波の特性上避けることが難しい物理的要因がいくつか存在します。
サイドローブによる偽像は、アンテナから本来の指向性(メインローブ)以外に漏れ出したわずかなエネルギーが、近くの物標に当たって跳ね返ることで生じます。この場合、画面上には本来の映像を中心に円弧状の映像が出現します。
マストや煙突による遮蔽は、レーダーアンテナよりも背の高い構造物が進行方向にある場合、その背後に影(死角)ができたり、構造物自体で反射した電波が画面を乱したりすることで発生します。
多重反射は、自船と近くの大型船などの間で電波が何度も往復する現象です。電波が往復する分、距離が遠く計測されるため、本来の物標よりも遠い位置に偽像が現れます。
なぜ選択肢4が正解(誤った選択肢)なのか
問題文は「偽像が現れる原因として誤っているもの」を選ばせるものです。
選択肢4の「自船と平行して大型船が航行している」という状況だけでは、単にその大型船がレーダーに正しく「本物」として表示されるだけです。大型船が存在すること自体は、レーダーの正常な動作範囲内であり、機器の不具合や電波伝搬の異常による「偽像」を直接的に生じさせる条件とは言えません。
一方で、スコール(大気団)については、雨や雪の粒子が電波を反射するため、画面上に不自然な映像やノイズ状の像(海面反射や雨雪反射)として現れます。これらはレーダーの運用上、実質的な偽像の一種として取り扱われることが多いため、試験対策としては偽像の原因としてカウントされます。
実務におけるレーダー映像の読み解き
この問題は、レーダー画面に映るすべてが「今そこにある本物の船や陸地」ではないことを理解するために非常に重要です。
実際の航海において、レーダーは非常に強力なツールですが、同時に錯覚を引き起こす要因も孕んでいます。例えば、近くに巨大な構造物があるときに発生する多重反射やサイドローブの影響を理解していないと、存在しないはずの船影を回避しようとして、逆に危険な操船をしてしまうリスクがあります。
試験対策としては、「サイドローブ」「遮蔽」「多重反射」「雨雪反射」というキーワードをセットで覚えておきましょう。これらが画面にどう影響するかを知ることは、霧の中や夜間でレーダーを頼りに航行する際に、現実の状況を正確に判断するための基礎体力となります。