第三級陸上特殊無線技士 / 第二級陸上特殊無線技士 試験問題例題(無線工学 No.2) / 各問題解説 / 問22
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第二級陸上特殊無線技士 試験問題例題(無線工学 No.2) 問22 解説 静止衛星通信

静止衛星通信についての記述として、正しいのはどれか。次のうちから選べ。

  1. 1. 現在の静止衛星通信に用いられる衛星は、ほとんどが極軌道衛星である。
  2. 2. 多元接続が困難なので、柔軟な回線設定ができない。
  3. 3. 使用周波数が高くなるほど、降雨による影響が少なくなる。
  4. 4. 衛星の太陽電池の機能が停止する食は、春分及び秋分の時期に発生する。 ✓ 正答

解説

静止衛星は赤道上空の軌道上に位置するため、太陽が赤道上に位置する春分および秋分の時期に、地球の影に入って太陽光が遮られる「食」が発生します。この知識があれば、選択肢4が正しい記述であると即座に判断できます。

宇宙の影に隠れる静止衛星と「食」のメカニズム

静止衛星は、赤道上空約36,000キロメートルの円軌道を、地球の自転と同じ周期および同じ向きで周回しています。地球から見ると常に空の同じ一点にとどまっているように見えるため、静止衛星と呼ばれます。

この静止衛星を動かす主な電力は、衛星に展開された太陽電池パドルによる太陽光発電で賄われています。しかし、春分および秋分の時期(とその前後の約45日間)になると、太陽、地球、そして静止衛星が宇宙空間でほぼ一直線に並ぶ配置になります。

このとき、衛星は地球の裏側(太陽の反対側)に回り込むことになり、地球の影を通過します。この現象を「食(しょく)」と呼びます。食の最中は太陽光が完全に遮られるため、太陽電池による発電が一時的にストップします。この間、衛星の機能は内部に搭載された蓄電池(バッテリー)からの放電によって維持されます。

選択肢を論理的にスクリーニングするアプローチ

試験問題において、誤りの選択肢を確実に排除するための技術的なポイントを解説します。

極軌道衛星と静止衛星の混同を避ける 選択肢1では、静止衛星に極軌道衛星が使われているとありますが、これは誤りです。極軌道衛星は北極と南極を結ぶ軌道を周回する衛星であり、地球の自転に伴って常に地上の見かけの位置が変化します。気象衛星や地球観測衛星の一部に用いられますが、地上に対して常に同じ位置に静止することは不可能です。

多元接続技術による柔軟な回線設計 選択肢2は、多元接続が困難であるとしていますが、これも誤りです。衛星通信では、1つの人工衛星に対して、地上の複数の地球局が同時にアクセスして通信を行う「多元接続(マルチプルアクセス)」の技術が広く実用化されています。周波数を分割する方式や、時間を細かく分割する方式などが使われており、柔軟で効率的な通信網の構築が可能です。

降雨減衰と周波数の関係 選択肢3にある、周波数が高くなるほど降雨の影響が少なくなるとする記述は間違いです。電波の周波数が高くなると、電波の波長は短くなります。この波長が雨粒の大きさに近づくほど、電波は雨によって散乱・吸収されやすくなり、電波の強度が著しく低下します。これを「降雨減衰」と呼び、高周波数帯を用いる通信において、激しい雨の日に通信品質が低下する大きな原因となります。したがって、周波数が高くなるほど、降雨による影響は大きくなります。

災害対策やインフラ設計における衛星通信の重要性

衛星通信の基礎知識は、災害時の非常用バックアップ回線や、地上インフラが整備されていない山間部・離島での通信ネットワークを設計・運用する上で極めて重要です。

例えば、降雨減衰の知識は、雨の多い地域で安定した通信回線を維持するために、どの程度の予備電力(マージン)を設計に盛り込むべきか、という判断基準になります。また、春分や秋分に発生する「食」の現象を把握しておくことは、衛星のバッテリー寿命の管理や、食のタイミングで発生し得る一時的な通信の切り替えリスクを想定した運用計画を立てるために不可欠です。

この問題は、単にキーワードを暗記するだけでなく、宇宙空間と地球というダイナミックな位置関係が、私たちの日常生活を支える無線通信にどのような物理的制約を与えているのかを理解させるという、無線従事者にとって非常に重要な教育的意図を持っています。

参考リンク

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