第二級陸上特殊無線技士 試験問題例題(無線工学 No.2) 問21 解説 周波数シンセサイザ
図は、周波数シンセサイザの構成例を示したものである。[ ] 内に入れるべき名称の組合せで、正しいのはどれか。下の番号から選べ。
- 1. IDC 高域フィルタ (HPF)
- 2. IDC 低域フィルタ (LPF)
- 3. 位相比較器 高域フィルタ (HPF)
- 4. 位相比較器 低域フィルタ (LPF) ✓ 正答
解説
周波数シンセサイザ(PLL回路)の構成図における空欄を埋める問題です。
基準となる信号と出力から戻ってきた信号が出会う場所であるAには「位相比較器」が入ります。また、位相比較器が出力した急峻な変化(高周波成分)を取り除き、電圧制御発振器をコントロールするための滑らかな直流電圧(低周波成分)へと変換するBには「低域フィルタ(LPF)」が入ります。したがって、正解は4の「位相比較器 低域フィルタ (LPF)」となります。
周波数シンセサイザ(PLL)を形作る各回路の役割
周波数シンセサイザは、基準となる1つの正確な周波数から、多様な周波数の信号を安定して作り出すための回路です。この仕組みはPLL(Phase Locked Loop:位相同期ループ)と呼ばれ、いくつかの回路が輪(ループ)のようにつながって構成されています。それぞれの役割は以下の通りです。
基準発振器と分周器によって作られた極めて正確な信号が、まず左側から入力されます。
これに対して、出力側から「可変分周器」を通って戻ってきた信号が下側から入力されます。
A(位相比較器)は、これら2つの信号の位相(タイミング)のズレを比較し、ズレに応じたパルス状の電圧を出力します。
B(低域フィルタ:Low Pass Filter)は、位相比較器から出力されたギザギザしたパルス信号から不要な高周波成分(ノイズ)を取り除き、滑らかな直流電圧(制御電圧)に変換して右側へ送ります。
電圧制御発振器(VCO)は、Bから送られてきた直流電圧の高さに応じて、出力する周波数を変化させます。
このループが高速で繰り返されることで、出力周波数は常に一定の正確な値に固定(ロック)されます。
図の信号の流れから空欄を推測するプロセス
この構成図の問題は、信号がどこから入って、どこへ向かっているかという「流れ」を見ることで簡単に解き明かすことができます。
まず、空欄Aに注目します。左側にある分周器からの矢印と、下側にある可変分周器からの矢印が、ともにAへと向かって合流しています。このように、2つの信号を「比較」してその差を検出する場所であることから、Aには位相比較器が入ることが分かります。この時点で、選択肢は3か4のどちらかに絞られます。
次に、空欄Bに注目します。A(位相比較器)が検知したズレの信号は、そのままでは細かくONとOFFを繰り返すパルス信号(高周波成分を多く含む信号)です。これを右側にある電圧制御発振器へそのまま送ってしまうと、発振周波数が細かくブレてしまい、出力される電波が非常に不安定になってしまいます。 そのため、電圧制御発振器へ送る前に、信号のトゲトゲした成分(高周波)をカットし、滑らかな直流電圧(低周波)に平滑化する必要があります。 高い周波数をカットし、低い周波数だけを通過させる回路は「低域フィルタ(LPF)」です。よって、Bには低域フィルタ(LPF)が入ります。
ちなみに、選択肢1と2にある「IDC」とは、送信機においてマイクからの音声信号が大きくなりすぎたときに変調が深くなりすぎるのを防ぐための「瞬時偏差制御(Instantaneous Deviation Control)」回路のことです。周波数シンセサイザのループ回路とは関係がありません。
安定した通信チャンネルの切り替えを実現する技術
周波数シンセサイザは、現代の無線機器において非常に重要な役割を果たしています。
かつてのアナログ無線機では、チャンネルを切り替えるたびに、その周波数に合わせた高価な水晶振動子という部品を物理的に切り替えるか、不安定なダイヤル式の発振器を使うしかありませんでした。
しかし、この周波数シンセサイザ(PLL)が開発されたことにより、たった1つの安定した基準水晶発振器から、可変分周器の割り算の比率(分周比)を電気的にスイッチするだけで、数多くの正確なチャンネル周波数を自由に、そして瞬時に作り出すことが可能になりました。私たちが普段使っているスマートフォンやトランシーバーが、電波の混信を起こさずに狙ったチャンネルにピタッとつながるのも、すべてこの回路が正確に機能しているおかげです。