第二級陸上特殊無線技士 試験問題例題(無線工学 No.2) 問15 解説 アンテナの偏波と指向性
次の記述において [ ] 内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。 ブラウンアンテナやホイップアンテナは、一般に [ A ] 偏波で使用し、このときの [ B ] 面内の指向特性は、ほぼ全方向性(無指向性)である。
- 1. A: 水平, B: 垂直
- 2. A: 垂直, B: 垂直
- 3. A: 水平, B: 水平
- 4. A: 垂直, B: 水平 ✓ 正答
解説
ブラウンアンテナやホイップアンテナは、地面に対して垂直に立てて使用するアンテナです。そのため、放射される電波は「垂直偏波」となります。また、アンテナを中心に360度どの方向にも均等に電波が飛ぶため、「水平面」内において無指向性(全方向性)となります。この2つの特徴を組み合わせることで、正解は「4. A: 垂直, B: 水平」と導き出せます。
アンテナの姿勢と偏波の関係
電波には、電気的な振動の方向を示す「偏波」という性質があります。 大地面(地面)に対して、電界の振動方向が垂直であるものを垂直偏波、水平であるものを水平偏波と呼びます。
ブラウンアンテナやホイップアンテナは、棒状の素子(エレメント)を地面に対してまっすぐ垂直に立てて設置します。 アンテナが垂直に立っているとき、そこから放射される電波の電界も垂直方向に振動するため、これらのアンテナは垂直偏波で使用されることになります。 逆に、テレビの受信に使われる八木アンテナのように、素子が地面と平行に横たわっている場合は、水平偏波になります。
3次元の広がりを断面で捉える指向特性
アンテナから電波がどの方向に強く放射されるかを表した性質を「指向特性」と呼びます。 指向特性を考えるときは、空間を「垂直な断面(垂直面)」と「水平な断面(水平面)」の2つに切り分けて整理します。
垂直に立った一本の棒をイメージしてください。 この棒を真上から見下ろすと、棒を中心とした綺麗な円が見えます。 電波も同様に、アンテナを中心として、地面と平行な水平面のあらゆる方向に均等に放射されます。 このように、どの方向にも偏りなく電波が届く特性を無指向性(全方向性)と呼びます。 したがって、水平面内における指向特性は、ほぼ無指向性となります。
一方、この棒を真横から見ると、電波は真上や真下にはほとんど飛ばず、横方向に強く広がっていく様子が見えます。 これが垂直面内の指向特性であり、こちらは方向によって電波の強さが異なるため、無指向性ではありません。
正解に至る判断のステップ
この問題を確実に解くためには、以下の2つのステップで選択肢を絞り込みます。
まず、アンテナの形状と設置スタイルを思い浮かべます。 ブラウンアンテナやホイップアンテナは、無線機の上や車のルーフ、基地局の鉄塔などに垂直にピンと立っているお馴染みのアンテナです。 垂直に立っているアンテナからは垂直偏波が出るため、[ A ] には「垂直」が入ります。この時点で選択肢は2か4に絞られます。
次に、全方向(360度均等)に電波を飛ばしたい場面を考えます。 アンテナを中心に、東西南北のどの方向にも同じように電波を届かせたい(無指向性にしたい)とき、その広がりは地面と平行な面、すなわち水平面の方向になります。 したがって、全方向性(無指向性)となるのは水平面内であるため、[ B ] には「水平」が入ります。
これにより、Aが垂直、Bが水平の組み合わせである「4」が正解となります。
この知識が実務や試験で重視される理由
ホイップアンテナやブラウンアンテナは、私たちの身の回りで最もよく使われているアンテナです。 スマートフォンの基地局、防災行政無線、タクシー無線、さらにはWi-Fiルーターのアンテナにいたるまで、移動体通信の多くでこれらの垂直系アンテナが採用されています。
その理由は、移動する端末がどの方向にいても電波をキャッチできるように、水平方向に対して360度均等に電波を放射する必要があるからです。 もしこれが特定の方向にしか飛ばないアンテナ(指向性アンテナ)であれば、端末が少し移動しただけで通信ができなくなってしまいます。
陸上特殊無線技士の試験においてこの問題が出題されるのは、無線設備の設置や運用にあたり、「どの向きにアンテナを立てれば、どの範囲に電波が届くのか」という極めて実用的かつ基礎的な物理原則を理解しているかを問うためです。 偏波の向きを送信側と受信側で合わせることは、通信の感度を最大にするための基本中の基本であり、実務においても極めて重要な知識となります。