令和8年度上期 学科試験 問34 解説 高圧受電設備の機器
問30から問34までは,下の図に関する問いである。 図は,自家用電気工作物構内の高圧受電設備及び低圧動力設備を表した図である。 この図に関する各問いには,4通りの答え(イ,ロ,ハ,ニ)が書いてある。それぞれの問いに対して,答えを1つ選びなさい。 〔注〕図において,問いに直接関係のない部分等は,省略又は簡略化してある。
- イ ✓ 正答
- ロ
- ハ
- ニ
解説
スターデルタ始動の基本特性を理解していれば、瞬時に「イ」が誤りであると判断できます。スターデルタ始動は、電動機の始動電流とトルクを全電圧始動時の に抑制するための方式であるため、選択肢イの「3倍にすることができる」という記述は事実と真逆です。
電動機の始動電流抑制という目的
スターデルタ始動方式は、電動機の始動時に固定子巻線を一時的にスター結線にすることで、各巻線に加わる電圧を線間電圧の 倍にします。これにより、始動時の電流を全電圧始動の に抑えることが可能となります。この技術は、始動時の突入電流による電源系統への電圧降下を防ぐために、比較的大容量の誘導電動機で広く採用されています。試験では「3倍」と「倍」という数値を入れ替えたひっかけ問題が頻出するため、この比率を正しく記憶しておくことが不可欠です。
分岐回路の電線太さ選定ルール
電動機の分岐回路における電線許容電流の決定には、定格電流に応じた係数が定められています。これは電動機が始動時に大きな電流を流すことや、定格運転が続くことを考慮した安全上のルールです。
- 定格電流が 50 A 以下の場合:定格電流の 1.25 倍以上の許容電流を持つ電線を選定します。
- 定格電流が 50 A を超える場合:定格電流の 1.1 倍以上の許容電流を持つ電線を選定します。
本問のポンプ(22 kW)は、定格電流が概ね 80 A 前後(電圧 200 V 級の場合)となるため 50 A を超えます。したがって、選択肢ロの「1.1 倍以上」という基準は正当です。逆に、送風機(7.5 kW)は定格電流が 30 A 程度であるため 50 A 以下となり、選択肢ハの「1.25 倍以上」という基準も正当です。
実務における設計思考
実務において、なぜこのような規定があるのかを理解することは試験合格への近道です。特にスターデルタ始動では、制御盤から電動機本体まで 6 本の電線(U1, V1, W1 および U2, V2, W2)を敷設する必要があります。これは始動時にスター結線を構成し、運転時にデルタ結線へ切り替えるという切り替えプロセスが必要だからです。
設計者は、これらの数値的な裏付けをもとに、ブレーカーの容量、電線の太さ、そして制御盤のサイズを決定します。現場でスターデルタ始動の配線に触れる際、「なぜ6本必要なのか」「始動時の電流はどれくらい抑制されるのか」という理論を意識することで、電気設備全体を俯瞰する力が養われます。この問題は、単なる暗記ではなく、機器の運転特性と安全基準をセットで考えるという、実務に直結した設計の勘所を問う良問と言えます。
参考リンク
- 第一種電気工事士試験の勉強法(一般財団法人 電気技術者試験センター)
- スターデルタ始動の回路設計と実務(Qiita 電気設計タグ)
- 誘導電動機の始動方式 - 電気学会による技術解説(電気学会)