令和7年度 上期 第一種 学科試験 (出題例) 問18 解説 電力ケーブルの損失
電力ケーブルのシース損として,正しいも のは。
- イ. 導体の抵抗による損失である。
- ロ. 導体と金属シースとの静電容量による損失である。
- ハ. 絶縁物の劣化による損失である。
- ニ. 金属シースに発生する起電力による損失である。 ✓ 正答
解説
シース損の判断根拠
シース損は、電力ケーブルの金属シース(金属遮へい層)に誘導電流が流れることで発生する損失のことです。選択肢の中から「金属シース」と「起電力(またはそれに伴う電流)」というキーワードが含まれているものを選ぶのが正解への最短ルートです。
なぜシースに損失が発生するのか
電力ケーブルに交流電流が流れると、その周囲に変動する磁界が発生します。この磁界がケーブルの金属シースを貫通することで、電磁誘導の原理により金属シースに起電力(誘導起電力)が生じます。
金属シースが電気的に閉回路(ループ)を形成している場合、この起電力によってシースに電流が流れます。この電流は「シース電流」と呼ばれ、シースの電気抵抗によってジュール熱()が発生します。これがシース損です。
なお、他の選択肢が誤りである理由は以下の通りです。 イ:導体の抵抗による損失は「導体損」であり、シース損とは区別されます。 ロ:静電容量による損失は「誘電体損」と呼ばれ、絶縁物内の分極などに関わる現象です。 ハ:絶縁物の劣化による損失は、漏れ電流の増加などに関わりますが、これもシース損とは別の物理現象です。
思考のステップ
この問題を解く際は、現象の発生源と損失のメカニズムを分離して考えると確実です。
- 名称を確認:シース損の「シース」はケーブルの外皮である金属部分を指す。
- 物理現象を連想:金属部分が磁界中にあるため、電磁誘導が起きる。
- 結果を推測:電磁誘導によって電流が流れ、抵抗があれば熱としてエネルギーが失われる。
このように「金属」「磁界」「誘導電流」という要素をセットで覚えておけば、試験で類似の出題がなされても迷うことはありません。
実務および試験における意義
電力ケーブルの設計において、シース損は「送電容量」を低下させる要因となります。シースに無駄な電流が流れるとケーブルが発熱し、その熱が絶縁体の温度を上昇させてしまうためです。
そのため、高圧ケーブルを布設する現場では、シースに流れる電流を抑制するために、金属シースを一点で接地したり、特殊な接続方法(クロスボンド接続など)を採用したりします。この問題は、単に用語を暗記するだけでなく、なぜ高圧送電線においてケーブルの接続や接地方法に工夫が必要なのか、その技術的な背景を理解しているかを問う非常に重要な項目です。