令和7年度 上期 第一種 学科試験 (出題例) 問10 解説 誘導電動機の始動法
三相かご形誘導電動機の始動方法として, 用いられないものは。
- 全電圧始動(直入れ)
- スターデルタ始動
- リアクトル始動
- 二次抵抗始動 ✓ 正答
解説
誘導電動機の構造と始動法の結びつきで判断する
この問題は、誘導電動機の種類(かご形か巻線形か)と、それぞれに対応する始動法の組み合わせを問う知識問題です。正解を導くための鍵は「二次抵抗」というキーワードが、構造上どのような電動機に必要なものかを整理することにあります。
かご形と巻線形の決定的な違い
三相誘導電動機には、回転子(ローター)の構造によって大きく分けて「かご形」と「巻線形」の2種類があります。
かご形誘導電動機は、回転子導体がリングで短絡された簡素な構造をしています。そのため、回転子回路に外部から抵抗を挿入することが物理的にできません。一方で巻線形誘導電動機は、回転子にコイル(巻線)が巻かれており、スリップリングとブラシを介して外部回路と接続することができます。
始動法において「二次抵抗」を用いる目的は、始動時の電流を抑えつつ、始動トルクを大きくすることにあります。この仕組みは、回転子回路の抵抗値を外部から調整できる巻線形誘導電動機特有の制御手法です。かご形誘導電動機は構造が閉じているため、この始動法を適用する余地がありません。
消去法を超えた構造の理解
試験会場でこの問題に出会ったとき、まずは各選択肢を以下のように分類する思考が有効です。
- 全電圧始動(直入れ):小型のかご形誘導電動機で最も一般的な始動法です。
- スターデルタ始動:始動時に電圧を下げて電流を抑制するため、かご形誘導電動機で広く使われます。
- リアクトル始動:電動機に直列にリアクトルを接続して電圧降下を利用し、始動電流を抑える方法です。これもかご形誘導電動機に適用可能です。
- 二次抵抗始動:回転子の二次側に抵抗を入れるというキーワードから、構造的にそれが可能な巻線形誘導電動機の専売特許であると即座に判断します。
「かご形には二次回路に直接アクセスできない」という構造上の制約をイメージできれば、迷わず選択肢を選ぶことができます。
実務における電動機選定の視点
第一種電気工事士の試験範囲を超えて実務的な視点を持つと、なぜこれらの使い分けが必要なのかがより深く理解できます。
かご形誘導電動機は、構造が頑丈でメンテナンスが容易という圧倒的なメリットがあるため、産業界で最も多く使われています。しかし、始動電流が大きくなりすぎるという欠点があるため、容量の大きい電動機ではスターデルタ始動やリアクトル始動などの「始動電流を抑制する工夫」が必要になります。
一方で、巻線形誘導電動機は、構造が複雑で高価ですが、始動時に大きなトルクが必要な負荷や、速度制御が必要な場面で選択されます。問題文にある「二次抵抗始動」は、まさに始動トルクの確保という目的において極めて合理的な手法なのです。試験問題は単なる暗記対象ではなく、こうした機器ごとの「得意なこと」と「苦手なこと」を分類するエンジニアリングの基本を問うていると言えます。