令和7年度 下期 学科試験 問8 解説 単相3線式回路の電流
図のような配電線路において, 抵抗負荷 R1 に 50 A, 抵抗負荷 R2 に 70 A の電流が流れ ている。変圧器の一次側に流れる電流 I [A] の 値は。 ただし, 変圧器と配電線路の損失及び変圧 器の励磁電流は無視するものとする。
- イ. 1
- ロ. 2 ✓ 正答
- ハ. 3
- ニ. 4
解説
この問題は、変圧器のエネルギー保存の法則、つまり「一次側の電力は二次側の合計電力に等しい」という原則を利用して解きます。損失を無視できる理想的な条件であれば、以下の手順で計算できます。
- 二次側の各負荷で消費される電力を個別に計算する。
- それらを合計して二次側の総電力を求める。
- 一次側の電圧で総電力を割り、一次電流を算出する。
具体的には、 となり、これを一次側電圧 で割ることで が導かれます。
変圧器が仲介する電力の平衡
変圧器は、電磁誘導を利用して電圧と電流を変換しますが、理想的な条件下ではその前後で電力の大きさは変わりません。電磁気学の基本式である (電力=電圧×電流)が、変圧器の一次側と二次側で等しく成立するという考え方が重要です。
本問のように中性線を持つ単相3線式の配電線路であっても、負荷にかかる電圧と電流が分かっていれば、二次側の総電力は単なる加算で求められます。変圧器という黒箱を介してエネルギーが等量受け渡されている、という物理的な構造を理解しておくことが、電気回路計算の基礎となります。
回路全体のバランスを捉える力
この問題を解く際の思考プロセスは、回路を「ソース側(一次)」と「シンク側(二次)」に切り分けて考えることです。
配電線路において、どの程度の負荷がかかっているかを把握することは、ケーブルの太さ選定や保護装置の整定値を決めるために不可欠です。本問のように二次側が複数の系統に分かれていても、結局は合計の電力需要がいくらであるかという視点を持つことで、一次側の配電線路に流れる電流を瞬時に予測できます。試験では、変圧器の巻数比などを与えずに一次側電圧を直接提示していますが、これは電力の平衡さえ理解していれば比の計算を介さずに答えが出ることを意図した問題構成です。
実務における変圧器容量の選定
この計算は、実際の現場で受変電設備を設計・維持管理する際にも頻繁に活用されます。
変圧器を選定する際、接続される負荷の総量に対して、どの程度の余裕を持たせるべきか(需要率や不等率の考慮)を考える必要があります。本問の数値は純粋な数学的計算ですが、現実の設計ではここに「負荷が同時に使用されるか否か」という要素が加わります。電気工事士試験を通じて、この「電力を送る・変換する・消費する」という一連の回路の流れをイメージできるようになると、試験合格だけでなく、実際の配線設計や負荷計算の考え方のベースがしっかりと身につきます。