令和4年度 第一種電気工事士 筆記試験 問33 解説 ケーブルラックの施工
④に示すケーブルラックの施工に関する 記述として,誤っているものは。
- イ. ケーブルラックの長さが15 mであったが,乾燥した場所であったため, D種接地工事を省略した。 ✓ 正答
- ロ. ケーブルラックは,ケーブル重量に十分耐える構造とし,天井コンクリ ートスラブからアンカーボルトで吊り,堅固に施設した。
- ハ. 同一のケーブルラックに電灯幹線と動力幹線のケーブルを布設する場合, 両者の間にセパレータを設けなくてもよい。
- ニ. ケーブルラックが受電室の壁を貫通する部分は,火災延焼防止に必要な 防火措置を施した。
解説
この問題は、電気設備の技術基準における金属製ケーブルラックの施設基準を問うものです。金属製ケーブルラックは金属製の配線支持物であるため、原則として接地工事が必要であるという基本原則を理解しているかが鍵となります。
金属製ケーブルラックと接地工事の原則
金属製ケーブルラックの施設において、接地工事の省略が認められるのは非常に限定的です。技術基準上、金属製のケーブルラックにはD種接地工事を施すことが義務付けられており、乾燥した場所であっても、その長さが一定以上であれば省略はできません。たとえ短いラックであっても、感電事故防止の観点から接地は必須の要件です。したがって、「乾燥しているから省略できる」という選択肢イの記述は明確な誤りとなります。
ケーブルの布設と環境対策の考え方
電気工事の実務において、ケーブルラックは単にケーブルを載せるだけでなく、安全かつ信頼性の高い配線経路を確保する役割を持ちます。
・機械的強度と支持 ケーブルラックは、その上に布設されるケーブルの総重量に耐えうる強度が必要です。コンクリートスラブからの吊り下げや壁面固定を行う際は、アンカーボルト等の強固な支持材を用い、地震や自重による脱落を防ぐ構造とします。
・混触と誘導の影響 電灯幹線(低圧)と動力幹線を同一ラック内に布設する場合、誘導や絶縁性能への配慮が求められます。本来は区別することが望ましいですが、技術的にはセパレータ(仕切り板)等で物理的に隔離することで、事故の波及や干渉を防止します。ただし、問題文にある「セパレータを設けなくてもよい」という点は、施工条件やケーブルの種類(シールド有無など)に依存しますが、一般的には両者を混在させる際の推奨事項として考慮が必要です。
・防火区画の貫通 壁や床などの防火区画を貫通する箇所は、万が一の火災時に炎や煙が隣室へ広がるのを防ぐ必要があります。これを防火貫通処理(ファイアストップ)と呼び、ロックウールなどの不燃材料を充填して隙間を塞ぐ施工が求められます。
現場で求められる安全の意識
この問題は、試験合格のためだけでなく、実際の現場で「何を根拠に接地を施すか」という安全管理の意識を問うています。「乾燥しているから大丈夫だろう」「短いから接地はいらないだろう」という個人の判断を排し、電気設備技術基準という客観的なルールに基づいた施工を行うことの重要性を説いています。
金属製ケーブルラックは、万が一ケーブルの絶縁被覆が損傷し、ラックと接触(地絡)した場合、接地がなければラック全体が充電部となります。このとき、人が触れると感電事故につながるため、接地工事は、施工者が作業者の命を守るための最後の防波堤として捉えるべきです。