令和4年度 第一種電気工事士 筆記試験 問32 解説 高圧引込線の接地工事
③に示す電路及び接地工事の施工として, 不適切なものは。
- イ. 建物内への地中引込の壁貫通に防水鋳鉄管を使用した。
- ロ. 電気室内の高圧引込ケーブルの防護管(管の長さが2 mの厚鋼電線管) の接地工事を省略した。 ✓ 正答
- ハ. ピット内の高圧引込ケーブルの支持に樹脂製のクリートを使用した。
- ニ. 接地端子盤への接地線の立上に硬質ポリ塩化ビニル電線管を使用した。
解説
金属管の接地工事における基本ルール
高圧電路の防護に使用する金属管には、万が一の漏電時に電位が上昇することを防ぐため、原則として接地工事が必要です。電気技術基準において、金属管の長さや場所に関わらず、高圧用ケーブルを収める金属管は「接地を省略できる条件」に該当しない限り、必ずD種(またはA種)接地工事を施さなければなりません。本問の「長さが2m」という数値はひっかけであり、電気室内の金属管であっても接地省略の根拠にはならないことが判断の決め手です。
なぜ2mであっても接地は省略できないのか
電気設備の技術基準では、金属製防護管の接地を省略できるのは「管の長さが4m以下」かつ「人が容易に触れるおそれがない場合」など、特定の条件下に限られます。しかし、これは主に低圧のケーブル配線などにおいて適用される考え方であり、高圧ケーブルの場合は安全上の観点からさらに厳格に扱われます。
特に本問のポイントは「電気室内」という点です。電気室は作業員が立ち入る場所であり、高圧ケーブルの金属管に万が一地絡電流が流れた場合、周囲の機器や人体に重大な影響を及ぼす可能性があります。したがって、金属管の長さが短くとも、感電事故を防止するために必ず接地工事を施して、電位を大地と同等に保つ必要があるのです。
各選択肢の妥当性を検証する
他の選択肢がなぜ適切であるかを確認することで、知識の解像度を高めます。
- イ. 壁貫通部に防水鋳鉄管を使用するのは、浸水防止の観点から標準的で適切な施工です。
- ハ. 樹脂製のクリートは絶縁物であり、金属のように接地を気にする必要がないため、ケーブル支持として適切です。
- ニ. 接地線自体の保護や配線のために硬質ポリ塩化ビニル電線管を使用することは、耐食性や保護の面から問題ありません。
これらの選択肢は、電気工事における「絶縁の維持」と「接地による安全性確保」のバランスを問うています。接地が必要な「金属管」と、接地を必要としない「絶縁材料」を区別し、適切な施工方法を選べる能力が試されています。
現場における接地工事の重要性
この知識は、施工管理や実際の電気工事現場において「なぜこの管に接地線を接続しなければならないのか」という理由を理解するために不可欠です。設計図書に接地線の記載が漏れていたとしても、高圧設備では金属管の接地が義務であることを施工者が理解していなければ、そのまま施工してしまい重大な事故につながる恐れがあります。
試験では「原則」と「例外」を問う問題が多用されます。特に高圧機器周辺では、利便性や見た目よりも、故障時の安全確保が最優先されるという電気工事の原則を常に念頭に置くことが、試験合格への近道となります。