2019年度 第一種電気工事士 筆記試験 問21 解説 CVケーブルの劣化
6kV CVT ケーブルにおいて, 水ツリーと 呼ばれる樹枝状の劣化が生じる箇所は。
- イ. ビニルシース内部
- ロ. 遮へい銅テープ表面
- ハ. 架橋ポリエチレン絶縁体内部 ✓ 正答
- ニ. 銅導体内部
解説
この問題は、キーワード「水トリー」が「架橋ポリエチレン(XLPE)絶縁体」とセットであることを知っていれば即答できる知識問題です。水トリー現象は、ケーブルの絶縁材料である架橋ポリエチレンそのものの劣化現象であると判断することで正解にたどり着けます。
水トリー現象とは何か
水トリーは、高圧以上のケーブルで一般的に使用される架橋ポリエチレン(XLPE)絶縁体の内部で発生する劣化現象です。文字通り、樹木(ツリー)のような形に絶縁体が劣化していくことからその名が付けられました。
この劣化は、以下の3つの条件が重なった時に発生しやすくなります。
- 水分が存在すること(ケーブル内の水分浸入など)
- 電界が集中していること(絶縁体内部の微細な空隙や異物、突起など)
- 交流電界が印加されていること
これらの条件が揃うと、絶縁体内部で電気化学的な反応が起こり、絶縁体分子の結合が徐々に切断され、絶縁性能が低下していきます。進行すると、最終的には絶縁破壊に至ることもあります。
知識を正解へとつなげるプロセス
試験では「水トリー」という言葉が出てきた瞬間に、「絶縁体の中」と連想することが重要です。
まず、ケーブルの構造を思い出してください。中心から「導体」「内部半導電層」「絶縁体(架橋ポリエチレン)」「外部半導電層」「遮へい銅テープ」「ビニルシース」という順になっています。水トリーは、電気的なストレスを最も強く受ける絶縁体の内部で進行するため、選択肢の中から「架橋ポリエチレン絶縁体」という言葉が含まれているものを選びます。
他の選択肢であるビニルシース(外装材)、遮へい層(接地用)、銅導体(電気の通り道)は、この劣化現象が直接発生する場所ではありません。特に「導体内部」は電気が流れる経路であり、絶縁体とは役割が全く異なるため、混同しないように整理しておくことがポイントです。
現場で求められる劣化診断の意識
この知識は、単なる試験対策を超えて、実際の現場でのメンテナンスや点検業務に直結します。
高圧ケーブルの保守において、水トリーの進行具合を把握することは、計画的な設備更新や事故未然防止のために極めて重要です。現場では、ケーブルの絶縁抵抗測定だけでは微細な水トリーを見つけることが難しい場合があるため、直流漏れ電流測定や残留電荷測定といった手法を用いて、絶縁体の健康状態を診断します。
出題者は、この試験を通じて「絶縁材料の特性と、それに関わる劣化要因を正しく理解しているか」を問うています。将来的に電気主任技術者として現場に出た際、ケーブルの経年劣化に直面したとき、「あ、これは水トリーの影響かもしれない」と初期段階で判断できるかどうかが、重大な停電事故を防ぐための第一歩となります。