平成30年度 第一種 筆記試験 問48 解説 直列リアクトルの役割
⑧で示す機器の役割として,誤っているものは。
- イ. コンデンサ回路の突入電流を抑制する。
- ロ. コンデンサの残留電荷を放電する。 ✓ 正答
- ハ. 電圧波形のひずみを改善する。
- ニ. 第5調波等の高調波障害の拡大を防止する。
解説
選択肢の検討と正誤判断
この問題では、図⑧で示される機器(直列リアクトル)の役割について、誤っているものを選択肢から見つける必要があります。直列リアクトルの基本的な役割を理解しているかどうかが問われています。
直列リアクトルの役割とは
直列リアクトルは、主に電力系統において、コンデンサバンクに直列に接続されるインダクタンス(コイル)です。その主な目的は、コンデンサバンクの設置によって生じる様々な問題を抑制し、電力系統の安定運用に寄与することにあります。
コンデンサ回路における問題点と直列リアクトルの対応
電力系統では、力率改善のためにコンデンサバンクが設置されることがよくあります。しかし、コンデンサバンクの設置にはいくつかの注意点があります。
- 突入電流の抑制: コンデンサバンクを系統に投入する際、充電されていないコンデンサに瞬間的に大きな電流が流れることがあります。これを突入電流と呼びます。突入電流は、遮断器の接点損傷や他の機器への悪影響を引き起こす可能性があります。直列リアクトルは、そのインダクタンス成分によって電流の立ち上がりを緩やかにし、突入電流を抑制する効果があります。
- 高調波障害の防止: 電力系統には、非線形負荷などから発生する高調波が含まれています。コンデンサバンクは、特定の周波数の高調波に対して共振を起こしやすく、高調波電流を増幅させてしまうことがあります。これにより、電圧波形のひずみが大きくなったり、機器の過熱などの障害を引き起こしたりします。直列リアクトルは、コンデンサと組み合わさることで、特定の高調波(例えば第5調波など)に対してリアクトルとコンデンサのインピーダンスが接近することで、共振周波数をずらし、高調波電流の増幅を抑制します。これは、電圧波形のひずみ改善にもつながります。
- 電圧波形の改善: 上記の高調波抑制効果により、結果として電圧波形がきれいになり、ひずみが改善されます。
残留電荷の放電について
コンデンサは、電力系統から切り離された後も、内部に電荷を蓄えたままになることがあります。これを残留電荷と呼びます。この残留電荷は、次にコンデンサバンクを投入する際に、突入電流の要因となったり、作業員が感電する危険性があったりします。
残留電荷を安全に放電する役割を担うのは、一般的に「放電コイル(または放電抵抗)」です。放電コイルは、コンデンサバンクと並列に接続され、コンデンサバンクが切り離された際に、残留電荷を抵抗(またはインダクタンス)を通して放電する回路を形成します。
選択肢の検討
以上の知識を踏まえて、各選択肢を検討します。
- イ. コンデンサ回路の突入電流を抑制する。 → 正しい。直列リアクトルの主な役割の一つです。
- ロ. コンデンサの残留電荷を放電する。 → 誤り。これは放電コイル(または放電抵抗)の役割です。
- ハ. 電圧波形のひずみを改善する。 → 正しい。高調波抑制による効果です。
- ニ. 第5調波等の高調波障害の拡大を防止する。 → 正しい。直列リアクトルは、コンデンサと組み合わせて高調波フィルタとして機能し、特定の高調波の共振を抑制します。
したがって、誤っているものは「ロ. コンデンサの残留電荷を放電する。」となります。
知識の活用場面
この知識は、電気工事士試験の過去問で頻繁に登場するテーマであり、特に電力技術や配電設備に関する理解を深める上で非常に重要です。実際の電気設備においても、力率改善用コンデンサバンクには、突入電流抑制のための直列リアクトルや、残留電荷放電のための放電コイルが必ず設置されています。これらの機器の役割を正確に理解していることは、安全かつ効率的な電気設備の設計・施工・保守に不可欠です。