平成30年度 第一種 筆記試験 問15 解説 変圧器の構造
写真に示すモールド変圧器の矢印部分の名称は。
- イ. タップ切替端子
- ロ. 耐震固定端部
- ハ. 一次(高電圧側)端子
- ニ. 二次(低電圧側)端子 ✓ 正答
解説
写真のモールド変圧器の矢印が指す部分の名称を答える問題です。このタイプの問題は、受変電設備に使われる主要機器の構造と、各部の名称を正しく覚えているかが問われます。
問題の解き方と判断のポイント
モールド変圧器は、ビルや工場などで広く使われる乾式変圧器の一種です。写真のような三相変圧器では、通常、電力を受け取る側(一次側)と電力を送り出す側(二次側)の両方に3本ずつの端子があります。
この問題では、矢印が指している端子群が、写真左側の端子群に比べて比較的シンプルで、相対的に低い位置に配置されていることがわかります。変圧器において、一般的に一次側(入力側)は高電圧、二次側(出力側)は低電圧となることが多いです。高電圧側の端子は、絶縁距離を確保するためにより間隔が広く取られたり、絶縁のための碍子(がいし)などが目立つ構造になっています。
写真の矢印部分が指しているのは、低電圧側の端子、すなわち二次側の端子であると判断できます。
モールド変圧器の基礎知識
モールド変圧器とは
モールド変圧器は、コイルがエポキシ樹脂などの絶縁体で固め(モールド)られた乾式変圧器の一種です。油入変圧器のように絶縁油を使用しないため、以下のような特徴があります。
- 火災の危険性が低い: 油を使用しないため、引火・爆発のリスクが大幅に低減されます。
- メンテナンスが容易: 油の交換や管理が不要なため、メンテナンスの手間が少ないです。
- 設置場所の制約が少ない: 防火壁や油溜めピットの設置が不要な場合が多く、ビル内や地下などでの設置に適しています。
- 環境への配慮: 絶縁油の廃棄や漏洩による環境汚染のリスクがありません。
これらの特徴から、特に都市部のビル、工場、病院、商業施設などの受変電設備で広く採用されています。
変圧器の一次側と二次側端子
変圧器は、電磁誘導の原理を利用して交流電圧を変換する機器です。
- 一次側端子: 電源側(入力側)と接続される端子で、通常は高電圧側です。
- 二次側端子: 負荷側(出力側)と接続される端子で、通常は低電圧側です。
写真の変圧器は、向かって左側にも3つの端子があります。これはおそらく一次側(高電圧側)の端子でしょう。そして、矢印が示しているのは、その一次側端子と対をなす二次側(低電圧側)の端子群です。
端子の配置は、メーカーや変圧器の種類によって多少異なりますが、一般的に高電圧側はより大きな絶縁距離が確保できるよう、低電圧側よりも物理的に高い位置に配置されたり、より強固な絶縁構造を持つことが多いです。写真の変圧器では、矢印が指す部分が比較的シンプルな構造であることからも、二次側(低電圧側)と判断できます。
なぜ一次・二次端子の識別知識が必要か
電気工事士の業務において、変圧器の一次側と二次側を正確に識別できることは、安全管理上、極めて重要です。
- 配線接続の正確性: 誤った電圧の回路に変圧器を接続したり、変圧器の一次側と二次側を間違えて配線したりすると、機器の破損、感電事故、短絡事故などの重大なトラブルに直結します。
- 安全作業の徹底: 高電圧が印加される一次側と、比較的安全な電圧の二次側とでは、作業時の感電リスクや必要な安全対策が大きく異なります。正しい識別は、作業者が適切な安全装備を着用し、適切な手順で作業を行うための第一歩となります。
- 故障診断とメンテナンス: 変圧器の故障診断やメンテナンスを行う際にも、どの端子がどの電圧レベルに属するかを正確に理解していなければ、正しい測定や点検ができません。
この問題は、単に名称を覚えているかだけでなく、「機器の構造から電圧レベルを推測し、安全に作業するための基礎知識があるか」という、電気工事士にとって非常に重要な実務能力を問う教育的な意図も含まれています。現場で実機を前にした際に、図面と照合しながら各部の名称を正しく把握できる能力は、安全かつ確実な電気工事を行う上で不可欠です。
学習のヒント
様々な種類の変圧器(油入変圧器、モールド変圧器など)の写真や図を見て、それぞれの特徴的な部分(一次側・二次側端子、タップ切替器、冷却フィン、油面計など)を識別できるようにしておきましょう。特に、一次側と二次側の端子は、電圧レベルの違いから見た目にも差異があることが多いため、着目すると良いでしょう。