平成30年度 筆記試験(追加試験分) 問30 解説 高圧受電設備図
問30から問34までは, 下の図に関する問いである。 図は, 自家用電気工作物(500 kW 未満)の引込柱から屋外キュービクル式高圧受電設備に至る施設の見取図である。 この図に関する各問いには, 4通りの答え(イ, ロ, ハ, ニ)が書いてある。それぞれの問いに対して, 答えを1つ選びなさい。 〔注〕図において, 問いに直接関係ない部分等は, 省略又は簡略化してある。
- イ.
- ロ.
- ハ.
- ニ. ✓ 正答
解説
引込柱の最上部に設置される機器の特定
この問題では、自家用電気工作物の受電点において最も重要な役割を果たす機器の名称を特定する必要があります。図中の1番は、電力会社の配電線から電気を引き込む際の最初の接点となる引込柱の最上部に設置されています。この位置に設置され、架空配線と需要家側の設備を接続・遮断する役割を持つ機器は、柱上気中負荷開閉器、通称PAS(Pole-mounted Air Switch)です。
実務上、この場所にはSOG(地絡方向継電器装置)と連動する開閉器が設置されるのが一般的であり、図の構成からもこれが責任分界点となる引込開閉器であることがわかります。
引込開閉器(PAS)の役割と機能
PASは単なるスイッチではなく、需要家側の設備で事故が起きた際に、その影響を電力会社の配電線に波及させないための防波堤の役割を持っています。
- 責任分界点としての機能 電力会社と需要家の保安上の責任の境界(責任分界点)に設置されます。点検や工事の際には、この開閉器を開放することで受電設備全体を無電圧状態にできます。
- 負荷電流の開閉 通常時の運転状態において、負荷電流を安全に遮断または投入することができます。ただし、短絡事故のような大電流を遮断する能力(遮断容量)は持っていないため、あくまで負荷電流の制御に用いられます。
- 地絡保護(SOGとの連携) 万が一、需要家内の高圧ケーブルなどで地絡(漏電)が発生した場合、付属のSOG継電器がそれを検知してPASを自動開放します。これにより、付近一帯を停電させる波及事故を未然に防ぎます。
設置場所と周辺機器からの判別プロセス
図面から機器を特定する際は、設置されている場所と、その前後に何があるかを確認するのが確実な方法です。
- 配置からの判断 1番の記号は電柱のトップにあり、電力会社の配電線から直接接続されています。この位置にあるのは引込開閉器です。架空引込の場合はPAS(気中式)、地中引込の場合はUGS(ガス式)が採用されますが、この図では電柱が描かれているためPASと判断できます。
- 他の選択肢との比較 避雷器(LA)は雷サージから設備を守るためのもので、PASの電源側または負荷側に並列に接続されます。図の1番は直列に回路を構成しているため当てはまりません。高圧カットアウト(PC)は小型の変圧器やコンデンサの保護に用いられるもので、受電点全体の主開閉器としては容量不足です。また、高圧交流負荷開閉器(LBS)は通常、キュービクル内部の主開閉器として使用されるもので、屋外の柱上に設置されることはありません。
施工と保守における教育的意図
この問題が試験で頻出するのは、第一種電気工事士が携わる自家用電気工作物において、PASの設置と保守が保安上極めて重要だからです。
実際の現場では、PASの交換作業やSOGの試験は定期的に行われます。特に高圧ケーブルの経年劣化による地絡事故は珍しくなく、PASが正しく動作するかどうかが、近隣の工場や住宅を巻き込む大事故(波及事故)を防ぐ唯一の鍵となります。この図面を読み解く知識は、単に記号を覚えることではなく、電気設備全体の安全を守るための責任分界点を理解することに直結しています。
flowchart TD
Grid["電力会社 配電線"] --- PAS["① 柱上気中負荷開閉器\n(PAS)"]
PAS --- Cable["② 高圧ケーブル\n(CV-Tなど)"]
Cable --- Cubicle["キュービクル\n(受電設備)"]
PAS -.-> SOG["SOG制御装置\n(地絡検知)"]