平成29年度 上期 筆記試験 問17 解説 架空送電線のダンパ
架空送電線に使用されるダンパの記述とし て,正しいものは。
- イ. がいしの両端に設け,がいしや電線を雷の異常電圧から保護する。
- ロ. 電線と同種の金属を電線に巻き付けて補強し,電線の振動による素線切れなどを防止する。
- ハ. 電線におもりとして取り付け,微風により生じる電線の振動を吸収し,電線の損傷などを防止する。 ✓ 正答
- ニ. 多導体に使用する間隔材で,強風による電線相互の接近・接触や負荷電流,事故電流による電磁吸引力から素線の損傷を防止する。
解説
ダンパとは「電線の振動を抑制するための重り」である、という点に絞って選択肢を吟味するのが正解への近道です。架空送電線路において、風によって発生する微細な振動(微風振動)は電線の素線を疲労破壊させる原因となります。これをおもり(ダンパ)で吸収・減衰させる仕組みさえ知っていれば、ハが正解であることは即座に判断できます。
送電線に発生する振動と対策の全体像
架空送電線路には、気象条件に応じて様々な振動が発生します。試験対策としては、以下の3種類の振動とそれぞれの対策をセットで暗記しておくことが重要です。
- 微風振動:比較的緩やかな風が吹いた際に発生する、電線が上下に細かく波打つような振動。これにはストックブリッジダンパなどの「ダンパ」を取り付けて吸収させます。
- ギャロッピング:着雪した電線などが風を受けて大きく上下に振れる現象。これはダンパではなく、電線の硬さや配置を調整して抑えます。
- サブスパン振動:多導体方式(複数の電線を束ねる方式)において、電線同士が接近・接触する振動。これには「スペーサ」を用います。
誤答選択肢から読み解く知識の整理
この問題の選択肢は、それぞれが架空送電線路に使われる別の部材を指しています。
イの「けいしや雷を貫通電圧から保護する」という記述は、がいし等の過電圧保護装置(アークホーンなど)に関する説明です。 ロの「電線に巻き付けて補強する」という記述は、アーマロッド(補強金具)の説明です。これは振動防止の補助や、電線の摩耗防止に使われます。 ニの「多導体に係る間隔材」という記述は、スペーサそのものの説明です。スペーサは多導体の電線同士を一定の間隔に保つためのもので、ダンパとは役割が異なります。
これらを整理することで、ダンパという言葉が持つ「振動エネルギーを熱に変えて消費する」という機能が浮き彫りになります。
実務現場で求められる知識の構造
第一種電気工事士の試験において、この問題が出題される背景には、設備を長期間にわたり健全に維持するための「経年劣化対策」を理解してほしいという意図があります。
実務では、送電線は一度敷設すれば数十年という長い期間使用されます。その間、風による振動を放置すれば、電線の接続部や支持点に金属疲労が蓄積し、最悪の場合は電線の切断事故につながります。ダンパは送電線の寿命を延ばすために非常に重要な「長寿命化のための部品」として現場で認識されており、その設置位置や種類は設計段階から厳密に管理されています。