平成23年度 筆記試験 問18 解説 中性点接地方式
送電用変圧器の中性点接地方式に関する記述として、誤っているものは。
- イ. 非接地方式は、中性点を接地しない方式で、異常電圧が発生しやすい。
- ロ. 直接接地方式は、中性点を導線で接地する方式で、地絡電流が小さい。 ✓ 正答
- ハ. 抵抗接地方式は、中性点を一般的に 100 〜 1000〔Ω〕程度の抵抗で接地する方式で、1線地絡電流を 100 〜 300〔A〕程度にしたものが多い。
- ニ. 消弧リアクトル接地方式は、中性点を送電線路の対地静電容量と並列共振するようなリアクトルで接地する方式である。
解説
送電用変圧器の中性点接地方式に関する問題では、各方式における地絡事故時の電流の大きさ(地絡電流)と、それに伴うメリット・デメリットを対比させることが正解への近道です。この問題の場合、直接接地方式が「地絡電流が大きい」という性質を持つことを知っていれば、即座に「地絡電流が小さい」とする誤った選択肢を特定できます。
中性点接地方式の分類と地絡電流
中性点接地方式は、電力系統において地絡事故が発生した際、健全相の対地電圧上昇を抑え、保護リレーの動作を確実にするために導入されます。主に以下の4つが重要です。
- 直接接地方式:中性点を大地に直接接地します。地絡事故時にループが短絡に近い状態となるため、地絡電流は非常に大きくなります。これにより地絡故障の検出が容易になりますが、機器への負担や通信線への誘導障害が課題となります。
- 抵抗接地方式:中性点に抵抗器を介して接地します。地絡電流を一定値に制限しつつ、保護リレーが必要な電流を確保するバランスの取れた方式です。
- 消弧リアクトル接地方式:中性点にリアクトルを接続し、地絡電流とリアクトルの遅れ電流を共振(打ち消し合い)させることで、地絡電流をほぼゼロにします。
- 非接地方式:あえて接地をしない方式です。対地静電容量のみを通じたわずかな充電電流しか流れないため、地絡電流は非常に小さくなります。
誤答を導き出す思考のプロセス
問題文で問われている「直接接地方式」に焦点を当てて検討します。直接接地方式は、変圧器の中性点と大地が電気的に直結されているため、地絡事故が発生すると、インピーダンスが極めて低い経路で大きな電流が流れます。
ここで、選択肢の内容を検討します。 「直接接地方式は、地絡事故時に流れる地絡電流が大きい」という特徴は、電力系統の絶縁レベルを下げる(経済性を高める)ことには貢献しますが、同時に遮断器の遮断能力や通信線への影響を考慮しなければならないという特徴と表裏一体です。したがって、「地絡電流が小さい」と述べている選択肢は、物理的な原理と真っ向から矛盾するため、これが誤りであると判断します。
技術的な背景と実務への応用
この問題の意図は、単なる暗記ではなく「接地方式が電力系統の設計思想をどのように変えるか」を理解することにあります。
日本の超高圧送電線(154kV以上など)で直接接地方式が採用されるのは、絶縁コストを低減できるメリットが大きいからです。一方で、中低圧の配電線や特定の工場内設備では、地絡電流を制限して設備の損傷を最小限に抑える抵抗接地などが好まれます。
試験問題としては、各方式のメリット・デメリットを整理し、地絡電流の「大小」を軸に比較する問題が頻出です。実務においても、系統の電圧階級や周囲の通信環境に応じて接地方式が選定されている背景を知ることは、設備の保護協調を考える際の基礎教養となります。