令和7年度 下期 学科試験 問22 解説 AGCの働き
スーパーヘテロダイン受信機のAGCの働きについての記述で、正しいのはどれか。次のうちから選べ。
- 1. 選択度を良くし、近接周波数の混信を除去する。
- 2. 受信電波が無くなったときに生ずる大きな雑音を消す。
- 3. 受信周波数を中間周波数に変換する。
- 4. 受信電波の強さが変動しても、受信出力をほぼ一定にする。 ✓ 正答
解説
AGCという用語は、Auto Gain Controlの略称であり、日本語では自動利得制御と呼びます。この単語の「利得(ゲイン)」を「制御」するという意味を理解していれば、選択肢の中から「出力を一定に保つ」という正解を直感的に選ぶことができます。
自動利得制御(AGC)の役割
無線通信では、送信機からの距離が遠くなったり近くなったり、あるいは地形の影響を受けたりすることで、受信する電波の強さが常に変化します。もし受信機がそのままの感度で電波を受け取ると、遠くの弱い電波は小さすぎて聞こえず、近くの強い電波は音が大きすぎて歪んでしまうという問題が発生します。
そこでAGC回路が働きます。受信した電波の強さを検出し、電波が強すぎるときは受信機の増幅器の利得(感度)を下げ、電波が弱すぎるときは利得を上げることで、最終的なスピーカーから出る音量を一定に保つ役割を果たします。これにより、利用者は音量を頻繁に調整することなく快適に通話や傍受ができるようになります。
誤った選択肢を排除する考え方
選択肢1の「選択度を良くする」は、主にフィルタ(同調回路)の役割です。 選択肢2の「大きな雑音を消す」は、スケルチ回路の役割です。 選択肢3の「中間周波数に変換する」は、周波数変換回路(局部発振器と混合器)の役割です。
試験では、それぞれの用語が「何のために存在するか」をセットで覚えることが近道です。AGCは「出力レベルの平準化」という機能さえ押さえておけば、他の選択肢に惑わされることはありません。
なぜこの知識が重要なのか
実際の無線運用現場では、相手局が移動しながら交信するケースが多々あります。例えば船が動いている際、陸上の基地局との距離は常に変わります。もし受信機にAGC機能がなければ、相手が近づくたびに手元のボリュームを下げるという手間が発生し、肝心な通信を聞き逃すリスクが高まります。
この問題は、無線受信機の動作を根本から理解しているかを問う良問です。受信機内の各回路がどのような目的で配置されているかを整理することは、第三級海上特殊無線技士としての実務的な運用能力の基礎となります。