令和7年度 下期 学科試験 問15 解説 レーダーの対策
船舶用レーダーで、船体のローリングにより物標を見失わないようにするため、どのような対策がとられているか。次のうちから選べ。
- パルス幅を広くする。
- アンテナの垂直面内のビーム幅を広くする。 ✓ 正答
- アンテナの水平面内のビーム幅を広くする。
- アンテナの取付け位置を低くする。
解説
船の揺れとレーダービームの関係
この問題は、船舶の運動特性とアンテナの指向性の関係を問うものです。正解を導くための判断根拠は、船体がローリング(横揺れ)した際、アンテナの放射方向が上下に振られるという現象に着目することです。ビームが鋭すぎると、船が揺れた瞬間に物標を捉えるビームの通り道から物標が外れてしまいます。これを防ぐために、垂直方向の指向性(ビーム幅)をあえて広く設計し、多少の傾きがあっても物標を照射し続けられるようにしています。
アンテナのビーム幅が果たす役割
レーダーのアンテナ(スロットアンテナなど)は、一般的に水平方向には鋭い指向性を持ち、垂直方向にはある程度の広がりを持たせています。
水平面内のビーム幅が狭いのは、方位の分解能を高めるためです。水平方向にビームを絞ることで、物標がどこにあるのかを精密に特定できるようになります。もし水平方向のビームを広くしてしまうと、複数の物標が重なって見えたり、方位の精度が極端に落ちたりしてしまいます。
一方で、垂直面内のビーム幅は、船の姿勢変化をカバーする役割を担います。船は波の影響で常にローリング(横揺れ)やピッチング(縦揺れ)を繰り返しています。アンテナから出る電波が上下方向に極端に細いビームであれば、船が傾くたびに電波が空や海面を向いてしまい、物標を見失うことになります。そこで、垂直方向にある程度の角度を持たせることで、船が揺れても安定して物標を捕捉できる構造にしているのです。
試験対策のポイントと実務への応用
この問題を解く際は、水平方向(方位)と垂直方向(姿勢)で、アンテナに求められる役割が真逆であることを整理してください。水平方向は「精度」、垂直方向は「安定」を追求するという考え方です。
試験では「水平方向のビーム幅を広くする」といった引っかけ選択肢が登場しやすいですが、これは分解能を捨てることを意味するため、実用的ではありません。実際の現場では、海上の厳しい気象条件においても安定した映像を表示し続けることが、衝突予防や安全航行に直結します。この仕組みを知っておくことは、レーダーがどのような物理学的制約の中で性能を維持しているのかという、レーダー運用者の基礎教養として非常に重要です。