第二級陸上特殊無線技士 試験問題例題(無線工学 No.1) 問15 解説 八木・宇田アンテナ
次の記述は、図に示す八木・宇田アンテナ(八木アンテナ)について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。 全アンテナ素子を水平にしたときの水平面内の指向特性は A である。導波器の素子数を増やせば利得は大きくなり、ビーム幅は B なる。
- 1. A: 全指向性 / B: 広く
- 2. A: 全指向性 / B: 狭く
- 3. A: 単一指向性 / B: 狭く ✓ 正答
- 4. A: 単一指向性 / B: 広く
解説
八木・宇田アンテナ(八木アンテナ)は、特定の方向にのみ強く電波を放射・受信する単一指向性のアンテナです。アンテナの先端側にある導波器の数を増やすほど、電波はさらに特定の一方向に絞り込まれるため、利得(電波の強さ)が大きくなり、電波の広がり角度を示すビーム幅は狭くなります。したがって、Aには単一指向性、Bには狭くが入る選択肢3が正解です。
八木・宇田アンテナの基本構造と動作原理
八木・宇田アンテナは、長さの異なる数本の金属棒(エレメント)を一本の支柱に並べた構造をしています。それぞれの金属棒は役割に応じて以下のように分類されます。
放射器(給電素子)
アンテナの中央付近にあり、同軸ケーブルなどの給電線が直接接続される部分です。送信時にはここから電波が送り出され、受信時にはここで電波を受け取ります。長さは使用する電波の約2分の1波長です。
反射器
放射器の後方に配置される、放射器よりも少し長い金属棒です。放射器から後ろに向かって出た電波を前方に跳ね返す鏡のような役割を果たします。
導波器
放射器の前方に配置される、放射器よりも少し短い金属棒です。電波を引き寄せて前方へ送り出すレンズのような役割を果たします。この導波器は複数本並べることができ、本数が多いほど電波を前方に強く集中させることができます。
これら3種類の素子が相互に干渉し合うことで、反射器側から導波器側へと向かう、一方向だけに極めて強い電波の通り道が作られます。
指向性とビーム幅を絞り込む思考プロセス
問題文の空欄を埋めるためには、アンテナの形状と電波の伝わり方の関係をイメージすることが重要です。
空欄A:水平面内の指向特性
八木・宇田アンテナは、テレビの受信アンテナ(魚の骨のような形状のもの)として、住宅の屋根の上などに設置されているのをよく見かけます。これは、送信所がある特定の方向に向けて固定されています。もし全方向(全指向性)から均等に電波を拾ってしまうと、関係のない方向からのノイズや反射波も拾ってしまい、映像が乱れる原因になります。特定の送信所からの電波だけを狙って効率よく受信するためには、単一指向性である必要があります。
空欄B:導波器を増やしたときのビーム幅
導波器は、電波を特定の方向に導くガイドの役割を持っています。 導波器の数を増やすということは、電波の通り道をより細く、長く絞り込んでいく作業に似ています。ホースのノズルを絞ると、水が広範囲に散らばるのを防ぎ、一直線に勢いよく遠くまで飛ぶようになります。これと同様に、導波器を増やすと電波が特定の方向に集中するため、その方向での強さ(利得)は大きくなり、電波の広がり角度(ビーム幅)は狭くなります。
現場で役立つアンテナ知識と試験の意図
無線従事者として現場に出た際、アンテナの指向性とビーム幅の関係を理解していることは、通信回線の設計やアンテナの設置作業において極めて重要です。
例えば、山間部やビル影など電波が届きにくい場所同士で通信を行う場合、導波器の数が多い高利得の八木・宇田アンテナを採用します。これにより、微弱な電波でも確実にキャッチできるようになります。
ただし、ビーム幅が狭いアンテナを使用するときは、わずかな向きのズレが通信品質の低下に直結します。台風などの強風でアンテナの向きが数度変わっただけで、通信が完全に途切れてしまうこともあります。
この問題は、単に用語の組み合わせを暗記するだけでなく、「素子数を増やすと、なぜ感度が上がり、なぜ向きの調整がシビアになるのか」という、実務におけるアンテナ運用のトレードオフを視覚的・論理的に理解させるという教育的意図が込められています。