令和8年度上期 学科試験 問20 解説 避雷器の機能
高圧受電設備に雷その他による異常な過大 電圧が加わった場合の避雷器の機能として, 適切なものは。
- イ. 過大電圧に伴う電流を大地へ分流することによって過大電圧を制限し,過大電圧が過ぎ去った後に,電路を速やかに健全な状態に回復させる。 ✓ 正答
- ロ. 過大電圧が侵入した相を強制的に切り離し回路を正常に保つ。
- ハ. 内部の限流ヒューズが溶断して,保護すべき電気機器を電源から切り離す。
- ニ. 電源から保護すべき電気機器を一時的に切り離し,過大電圧が過ぎ去った後に再び接続する。
解説
避雷器(LA)の役割は、雷などによる異常電圧が襲ってきた瞬間に「電気の逃げ道」を作って機器を保護し、異常が去ったら「何事もなかったかのように元の状態に戻る」という、自動復帰型のガードマンであると理解するのが最短の合格への道です。
避雷器の二大機能:放電と続流遮断
避雷器の内部には、通常時は電気を通さない絶縁体でありながら、高い電圧が加わった瞬間に抵抗が急激に低くなる「非直線抵抗体(酸化亜鉛素子など)」が収められています。この特性によって、以下の2段階の動作を実現しています。
過大電圧の制限(分流) 雷サージなどの異常電圧が電線に侵入すると、避雷器の抵抗が瞬時に下がり、過大な電流を大地へと逃がします。これにより、受変電設備内の変圧器や遮断器にかかる電圧を、それらの機器が耐えられる「制限電圧」以下に抑え込み、絶縁破壊による事故を防ぎます。
正常状態への回復(続流遮断) 異常電圧が通り過ぎ、電圧が通常の商用電圧に戻ると、避雷器は再び高い抵抗値を取り戻します。これにより、大地へ流れ続けようとする通常の電流(続流)を速やかに遮断し、回路を元の健全な送電状態に復帰させます。
選択肢を絞り込む思考プロセス
この問題では、避雷器が「回路を切り離すのか、あるいは維持するのか」という動作原理の違いを見極めることが重要です。
ロの「相を強制的に切り離す」や、ニの「一時的に切り離し、後に再び接続する」といった動作は、遮断器や自動切替スイッチのような動作を指しており、避雷器の動きとは異なります。避雷器は機器を回路から切り離すのではなく、並列に接続された状態で異常なエネルギーだけを地面に逃がす装置です。
ハの「限流ヒューズが溶断して」という記述は、パワーヒューズ(PF)などの保護要素と混同させようとする意図があります。避雷器は、一度動作しただけで部品を交換しなければならない使い捨てのヒューズとは異なり、規定内であれば繰り返し動作することが前提の機器です。
したがって、分流によって電圧を制限し、かつ速やかに元の状態に回復させるというプロセスを正確に記述しているイが正解となります。
なぜこの知識が問われるのか
高圧受電設備において、避雷器は設備の入り口(受電点)に設置される最も重要な保護装置の一つです。雷は自然現象であり防ぐことはできませんが、そのエネルギーを適切に逃がす仕組みを理解しておくことは、電気火災や高価な電気機器の破損を防ぐために不可欠です。
実務では、避雷器が動作したことを確認するための動作表示器のチェックや、接地抵抗が適切に維持されているかの管理が重要になります。試験において避雷器の定義が頻出するのは、単に言葉を覚えるだけでなく、電気設備を「壊さずに守り抜く」という保全の基本概念を問うているからです。