令和5年度 学科試験 問34 解説 高圧進相コンデンサ
⑤に示す高圧進相コンデンサ設備は,自動力率調整装置によって自動的に力率調整を行うものである。この設備に関する記述として,不適切なものは。
- イ. 負荷の力率変動に対してできるだけ最適な調整を行うよう,コンデンサは異容量の2群構成とした。
- ロ. 開閉装置は,開閉能力に優れ自動で開閉できる,高圧交流真空電磁接触器を使用した。
- ハ. 進相コンデンサの一次側には,限流ヒューズを設けた。
- ニ. 進相コンデンサに,コンデンサリアクタンスの5%の直列リアクトルを設けた。 ✓ 正答
解説
直列リアクトルの基本知識で正誤を判断する
この問題は、高圧進相コンデンサ設備に設置する直列リアクトルの「誘導リアクタンス値」が適切かどうかを問う知識問題です。正解の根拠は、直列リアクトルのインダクタンス値がコンデンサ容量の「6%」であることを暗記しているかどうかに集約されます。選択肢ニにある「5%」という数値は、高圧回路の設計基準から外れているため不適切と判断します。
直列リアクトルが持つ役割と第5調波の関係
高圧進相コンデンサに直列リアクトルを接続する最大の目的は、系統内に含まれる高調波、特に第5調波の抑制です。電力系統には、整流器やインバータなどの非線形負荷から第5調波(250Hz)が発生します。
進相コンデンサと回路のインダクタンスが直列に繋がると、特定の周波数で共振現象が起こる可能性があります。第5調波の周波数でコンデンサと系統が直列共振してしまうと、過大な電流が流れ、コンデンサの焼損や系統電圧の歪みが発生します。これを防ぐために、コンデンサ容量の6%(リアクタンス値)のリアクトルを挿入することで、第5調波以下の周波数で誘導性になるように調整し、共振を回避します。この「6%」という値は、日本の高圧配電系統の技術水準に基づいた定数として、試験でも実務でも必須の知識です。
機器選定における判断の思考プロセス
試験会場でこの問題に出会った際は、まず各選択肢のキーワードに注目します。
- 異容量の2群構成(選択肢イ):負荷変動に合わせてコンデンサをステップ的に投入・遮断する場合、容量を組み合わせることで細かな調整が可能になります。これは合理的な設計です。
- 真空電磁接触器(選択肢ロ):高圧回路での頻繁な開閉には、アーク消弧能力が高くメンテナンス性に優れた真空電磁接触器(VCS)が適しています。
- 限流ヒューズ(選択肢ハ):コンデンサの短絡事故時に、アークを速やかに遮断して被害を最小限に留めるため、高圧限流ヒューズ(PF)を設けるのは標準的な保護方式です。
- 5%の直列リアクトル(選択肢ニ):ここで「あれ、6%ではないか?」という違和感を持つことが重要です。電気設備の設計において、リアクタンス値は技術基準で定められた定数と照らし合わせる必要があるため、5%という中途半端な数値は誤りであると即座に判断できます。
実際の現場での重要性
この知識は、受変電設備の設計や保守管理において極めて重要です。もし現場で間違えて5%のリアクトルを選定してしまった場合、第5調波に対する抑制効果が不十分となり、最悪の場合はコンデンサの過熱や火災事故につながる恐れがあります。
第一種電気工事士の試験では、こうした「定数」に関する知識がしばしば問われます。直列リアクトルの「6%」という数字は、単なる暗記項目ではなく、日本の電力品質を支える安全設計の根幹であると理解しておくことで、記憶の定着率が大きく変わります。