令和4年度 第一種 筆記試験 午後 問33 解説 変圧器の防振・耐震
④に示す変圧器の防振又は,耐震対策等の施工に関する記述として,適切でないものは。
- イ. 低圧母線に銅帯を使用したので,変圧器の振動等を考慮し,変圧器と低圧母線との接続には可とう導体を使用した。
- ロ. 可とう導体は,地震時の振動でブッシングや母線に異常な力が加わらないよう十分なたるみを持たせ,かつ,振動や負荷側短絡時の電磁力で母線が短絡しないように施設した。
- ハ. 変圧器を基礎に直接支持する場合のアンカーボルトは,移動,転倒を考慮して引き抜き力,せん断力の両方を検討して支持した。
- ニ. 変圧器に防振装置を使用する場合は,地震時の移動を防止する耐震ストッパが必要である。耐震ストッパのアンカーボルトには,せん断力が加わるため,せん断力のみを検討して支持した。 ✓ 正答
解説
変圧器の設置と地震対策のセオリー
この問題は、変圧器などの重量物を床面に固定する際の構造的要件を問うています。正解の根拠となる「適切でない」選択肢を見抜くポイントは、地震発生時に機器にかかる物理的な力(水平力と引抜き力)を正しく理解しているかどうかです。
試験対策としては、「アンカーボルトは横からの力(せん断力)だけでなく、ひっくり返ろうとする力(引抜き力)にも耐える必要がある」という点を暗記してください。不適切な選択肢には「水平力のみを考慮すればよい」といった、引抜き力を無視した誤った記述が含まれます。
地震時に変圧器にかかる力のメカニズム
変圧器は重量があるため、地震で揺れると大きな慣性力が働きます。このとき、機器には主に以下の2つの負荷がかかります。
せん断力 地震の揺れによって機器が横に滑ろうとする力です。アンカーボルトの軸に対して直角方向に負荷がかかります。
転倒モーメントによる引抜き力 変圧器は重心が高いため、揺れによってその場に留まろうとする慣性が働くと、片側の脚が浮き上がろうとする力が働きます。これが転倒モーメントであり、アンカーボルトにはボルトを引き抜こうとする方向の強い力がかかります。
施工時には、これら双方の力に対して、使用するアンカーボルトの強度や埋め込み深さが十分であることを確認しなければなりません。設計者は、機器の重量、重心位置、設置場所の地震地域係数などを考慮して、アンカーボルトの選定を行います。
施工現場における判断のプロセス
試験問題では、施工現場の現実的なルールが問われます。この問題を解く際の思考プロセスは以下の通りです。
- 機器の固定における基本原則を思い出す:重量機器は地震動に対して「滑り」と「転倒」を防ぐ必要がある。
- 選択肢を分析する:水平方向の力(せん断)に関する記述は正しいか、垂直方向の力(引抜き)を過小評価していないかを確認する。
- 現場感覚と照らす:工事現場では、もしボルトの引き抜き対策を怠れば、機器が傾いたり転倒したりして、ケーブルが引きちぎられ、火災や停電につながるリスクがあることを想起する。
特に変圧器は二次側に高圧や低圧のケーブルが接続されており、機器が少しでも動けばこれらの接続部に応力が集中し、破損の原因となります。したがって、強固な基礎と適切なアンカー施工は、単なる機器の固定ではなく、電気設備の健全性を守るための重要な安全対策として位置づけられています。
なぜこの知識が試験で重要なのか
第一種電気工事士は、大規模な電気設備の設計や施工管理に携わる責任ある資格です。家庭用機器とは異なり、受変電設備は一度の地震で破壊されると、周辺地域全体に多大な影響を及ぼします。
試験問題の教育的意図としては、計算式を解く力だけでなく、施工現場で「どのような力が働くから、どのような施工が必要なのか」という力学的な根拠に基づいて判断を下せる技術者であることを求めています。現場で「このボルトで大丈夫か」と問われた際、せん断力だけでなく転倒モーメントまで考慮できる視点を持つことが、事故を未然に防ぐプロの判断といえます。