令和4年度 第一種 筆記試験 午後 問19 解説 変圧器の並行運転
同一容量の単相変圧器を並行運転するため の条件として,必要でないものは。
- イ. 各変圧器の極性を一致させて結線すること。
- ロ. 各変圧器の変圧比が等しいこと。
- ハ. 各変圧器のインピーダンス電圧が等しいこと。
- ニ. 各変圧器の効率が等しいこと。 ✓ 正答
解説
変圧器の並行運転において、各変圧器に役割分担させるための「必須条件」か「そうでないか」を判別します。結論からいえば、負荷電流をそれぞれの容量に応じて適切に分担させるために必要な条件は「電気的な定数(変圧比やインピーダンスなど)」が一致していることですが、「効率」という性能そのものの良し悪しは、並行運転自体を成立させるための絶対条件ではありません。
並行運転の必須条件
変圧器を並行運転する目的は、複数の変圧器を接続して容量を増大させることです。このとき、適切に負荷を分担させるために以下の条件が求められます。
- 極性が一致していること(極性が逆だと短絡状態となり、過大な電流が流れて焼損する)
- 変圧比(巻数比)が等しいこと(変圧比が異なると、変圧器間で循環電流が流れ、損失や過熱の原因となる)
- パーセントインピーダンス電圧が等しいこと(インピーダンスが異なると、負荷の分担が容量の比率通りにならず、一方の変圧器だけが過負荷になる)
- 相回転および角変位が等しいこと(三相の場合に不可欠な条件であり、これらが異なると位相差による循環電流が発生する)
これらの条件は、変圧器が電気的に正しく接続され、互いに干渉し合わずに電力を供給するためのルールといえます。
なぜ「効率」は条件に含まれないのか
効率とは、変圧器の損失(鉄損や銅損)が入力に対してどの程度であるかという、機器の「性能指標」です。
仮に、効率の異なる変圧器を並行運転したとしても、上記の電気的条件(変圧比やインピーダンス)が満たされていれば、並行運転自体は支障なく行えます。効率が悪い変圧器は、単に損失として熱を多く出すだけであり、回路を崩壊させるような致命的な循環電流を生む原因にはなりません。したがって、効率の数値が一致している必要はありません。
実務におけるこの知識の意義
試験問題としては「並行運転条件」を暗記しているかが問われていますが、実務においては、単に接続できるかどうかだけでなく「なぜその条件が必要か」という物理的背景が重要になります。
例えば、メンテナンスや設備更新の現場で既存の変圧器に別の変圧器を追加する場合、このルールを知らなければ、重大な短絡事故や変圧器の焼損を招く恐れがあります。特にパーセントインピーダンスの不一致は、古い変圧器と新しい変圧器を組み合わせる際に見落とされがちなポイントです。実務では単に条件を満たすだけでなく、それぞれのインピーダンスを考慮した負荷の計算(%Zによる負荷分担)までが求められるため、この知識は電気技術者としての基礎体力といえます。