令和4年度 第一種 筆記試験 午後 問13 解説 サイリスタ回路
図に示すサイリスタ(逆阻止3端子サイリスタ)回路の出力電圧 v0 の波形として、得ることのできない波形は。 ただし、電源電圧は正弦波交流とする。
- イ.
- ロ.
- ハ.
- ニ. ✓ 正答
解説
この問題は、サイリスタ(逆阻止3端子サイリスタ)の整流特性を理解しているかを問うものです。出力電圧波形として「得ることができない」ものを選ぶため、サイリスタが「導通できない状態」を波形から見抜くのが正解への近道です。
具体的には、サイリスタは交流の負の半サイクルでは逆電圧がかかるため、ゲート信号を与えても導通しません。したがって、出力電圧が負の値になる波形は物理的にあり得ないと判断できます。
サイリスタの基本特性
サイリスタは、ゲートに信号(ゲート電流)が与えられた時点で導通を開始し、電流がゼロになる(自然消弧)までオン状態を維持する半導体素子です。
交流電源と組み合わせた場合、以下の2つの大きな制約があります。
- 順方向(電源電圧が正のとき):ゲート信号が与えられるまではオフ状態ですが、信号が入ると導通します。一度導通すれば、その半サイクルの間はオン状態が続きます。
- 逆方向(電源電圧が負のとき):アノード・カソード間に逆電圧がかかるため、ゲート信号の有無に関わらず、サイリスタは常にオフ(非導通)状態となります。
この特性により、出力波形は必ず「ゼロまたは正の値」のいずれかとなり、負の電圧が出力されることはありません。
選択肢の検討と判断プロセス
設問の図にあるように、逆阻止3端子サイリスタを単体で使用する回路では、常に一方方向の電流しか流れません。
- イ、ロ、ハの波形:すべて正の電圧部分のみ、あるいは電圧がゼロの部分で構成されており、サイリスタの特性と合致しています。これらはゲート信号を与えるタイミング(点弧角)を調整することで実現可能です。
- ニの波形:負の領域にも電圧が発生しています。これは、交流の負のサイクルにおいても電流が流れていることを意味しますが、単体のサイリスタには逆方向に電流を流す能力がないため、このような波形は得ることができません。
パワーエレクトロニクスの入り口として
この問題は、単に試験の正解を導くだけでなく、実際の電気設備の制御において非常に重要な考え方を示しています。
実務では、モータの速度制御や調光装置、あるいは交流を直流に変換する整流回路などでサイリスタが用いられます。サイリスタは「交流の特定の位相だけでスイッチを入れる」ことができるため、平均電圧を自在にコントロールできるのが最大の強みです。
もし「負の領域も活用したい」と考えた場合は、サイリスタを逆並列に接続して双方向の電流を流すようにするか、あるいはダイオードと組み合わせてブリッジ整流回路にする必要があります。この問題で「得ることができない」と判断した知識は、より複雑なパワーエレクトロニクス回路を読み解くための基礎体力となります。