令和3年度 上期 筆記試験 問36 解説 絶縁抵抗計の保護端子
高圧ケーブルの絶縁抵抗の測定を行うとき, 絶縁抵抗計の保護端子(ガード端子)を使用す る目的として,正しいものは。
- イ. 絶縁物の表面を流れる漏れ電流も含めて測定するため。
- ロ. 高圧ケーブルの残留電荷を放電するため。
- ハ. 絶縁物の表面を流れる漏れ電流による誤差を防ぐため。 ✓ 正答
- ニ. 指針の振れによる焼損を防ぐため。
解説
絶縁抵抗計の「ガード端子」の役割は、表面漏れ電流を測定回路から迂回(バイパス)させることで、純粋に絶縁体内部の抵抗値だけを正確に測定することにあります。
ガード端子と漏れ電流の仕組み
絶縁抵抗計には、通常「L(ライン)端子」と「E(アース)端子」の2つがありますが、高精度の測定を行うために「G(ガード)端子」が備わっているものがあります。
被測定物(ケーブルなど)に高い電圧をかけると、電流は「絶縁体の中を通る電流」と「絶縁体の表面を伝う電流」の2つの経路で流れます。絶縁抵抗計が測定したいのはあくまで「絶縁体の中を通る電流」です。しかし、湿度が高い環境などでは、ケーブルの表面に汚れや水分が付着し、表面を流れる漏れ電流が増加してしまいます。これが測定値に混ざると、本来の抵抗値よりも低い値が表示され、誤差の原因となります。
ガード端子に接続された導体は、漏れ電流を拾って絶縁抵抗計の内部回路を通し、測定用の電流計を通さずに直接電源側へ戻す役割を果たします。これにより、表面を流れる電流が測定値に影響を与えないように制御されるのです。
正解を導くための思考プロセス
この問題を解く際のポイントは、「ガード」という言葉の持つ「守る(=誤差から守る)」というニュアンスを理解することです。
- 選択肢イ:「含めて測定する」とありますが、通常は絶縁体内部の抵抗を知ることが目的であり、表面電流はノイズに過ぎません。したがって誤りです。
- 選択肢ロ:「残留電荷の放電」は、絶縁抵抗計の機能ではなく、測定終了後に専用の放電棒などを用いて安全に行う作業です。したがって誤りです。
- 選択肢ハ:「表面漏れ電流による誤差を防ぐ」という記述は、ガード端子の本来の目的と一致します。これが正解となります。
- 選択肢ニ:「焼損を防ぐ」のはヒューズや保護回路の役割であり、測定原理に関わるガード端子の役割ではありません。
実務現場における意義
試験問題としてだけでなく、実際の高圧電気設備点検の現場でもこの知識は極めて重要です。例えば、屋外や湿気の多い場所でケーブルの絶縁抵抗を測定する場合、表面状態によって値が大きく変動し、正常なケーブルであっても不良品と判定してしまうリスクがあります。
試験では「理論上の正確さ」を問う問題として出題されますが、実務では「なぜこの環境で値が安定しないのか」というトラブルシューティングの基礎知識となります。高圧ケーブルの信頼性を正しく評価し、誤判定による不要な工事や交換を防ぐために、ガード端子の適切な使い方は電気技術者として習得しておくべき必須のスキルです。