令和3年度 上期 筆記試験 問16 解説 火力発電の環境対策
火力発電で採用されている大気汚染を 防止する環境対策として、誤っているものは。
- イ. 電気集じん器を用いて二酸化炭素の排出を抑制する。 ✓ 正答
- ロ. 排煙脱硝装置を用いて窒素酸化物を除去する。
- ハ. 排煙脱硫装置を用いて硫黄酸化物を除去する。
- ニ. 液化天然ガス(LNG)など硫黄酸化物をほとんど排出しない燃料を使用 する。
解説
大気汚染対策装置の役割を整理する
この問題は、火力発電所における環境対策装置の名称とその目的を正しく結びつけられるかを問うています。正解を導くには、「その装置が何を除去するためのものか」という対応関係を正確に記憶しておくことが重要です。
選択肢イは、電気集じん器の役割を二酸化炭素(CO2)の抑制としていますが、これは誤りです。電気集じん器は、排ガス中の「ばいじん(粉塵)」を静電気で捕集して除去する装置です。CO2の排出を抑制するためには、装置による除去ではなく、高効率な発電設備への更新や、より炭素含有量の少ない燃料への転換が必要となります。
排煙処理の基本メカニズム
火力発電所における代表的な大気汚染物質と、それに対応する対策技術を以下のように整理できます。
・窒素酸化物(NOx) 燃焼温度が高いと空気中の窒素と酸素が反応して生成されます。対策には「排煙脱硝装置」が用いられ、アンモニアなどの還元剤を使って、無害な窒素と水に分解します。
・硫黄酸化物(SOx) 燃料に含まれる硫黄分が燃焼することで発生します。対策には「排煙脱硫装置」が用いられ、石灰石スラリーなどを吸収剤として使い、中和反応によって硫黄酸化物を除去します。
・ばいじん(煤塵) 燃料の燃えカスや灰などが微粒子として排出されるものです。「電気集じん器」により、電極間でコロナ放電を起こし、帯電した粉塵を対向電極に付着させて除去します。
思考のステップ
問題文の「環境対策として誤っているもの」を探す際は、以下の手順で検討します。
- 各選択肢の装置名と、それが除去・対策対象としている物質を一致させる。
- その対策技術が、その物質の発生・排出メカニズムと論理的に矛盾していないかを確認する。
- 今回のように「集じん(=粉塵をとる)」という名称から推測できる機能と、「CO2(=気体)」という対象物質に違和感がないかを確認する。
もし用語の定義で迷った場合は、その装置が物理的な「粉塵」を扱っているのか、化学的な「ガス成分」を扱っているのかをイメージすると、誤りに気づきやすくなります。電気集じん器は物理的に塵を吸着するものであるため、CO2のような気体を直接「集めて捨てる」ものではないと判断できます。
環境技術が電力供給に果たす役割
第一種電気工事士の試験において、こうした環境対策の知識は、送配電設備や発電所に関わる技術者が持つべき「社会的責任と安全・環境管理」の一環として問われます。
現代の電力供給システムでは、安定して電気を届けることと同じくらい、地域環境への配慮が不可欠です。排煙脱硫や脱硝、集じんといった技術は、発電所が立地する周辺地域の空気を清浄に保ち、健康被害や酸性雨を防ぐために欠かせません。実務において直接的にこれらの装置を設計することはないかもしれませんが、発電プラントの構成要素として何がどのような役割を果たしているかを知っておくことは、電力供給の全体像を理解する上で非常に重要な知識となります。