令和2年度 第一種電気工事士 筆記試験 問12 解説 変圧器の損失特性
変圧器の出力に対する損失の特性曲線において, aが鉄損, bが銅損を表す特性曲線として, 正しいものは。
- イ.
- ロ.
- ハ.
- ニ. ✓ 正答
解説
この問題は、変圧器における2つの主要な損失である鉄損と銅損の特性を理解しているかを問うものです。正解を選ぶための判断基準は以下の通りです。
- 鉄損(a)は、変圧器の負荷(出力)に関係なく電圧が一定であれば常に一定であるため、グラフでは水平線となります。
- 銅損(b)は、負荷電流の2乗に比例して増加するため、出力が大きくなるほど急激に上昇する放物線(2次曲線)となります。
これらを満たすグラフは、選択肢ニとなります。
鉄損と銅損のメカニズム
変圧器で発生する損失は、大きく分けて鉄心で生じる損失と巻線で生じる損失の2つがあります。
鉄損は、変圧器の鉄心内で磁束が変化することによって生じる損失です。これは主にヒステリシス損と渦電流損から成り立っており、電源電圧が一定であれば磁束密度も一定になるため、負荷の大小にかかわらずほぼ一定の値を示します。そのため、グラフ上で鉄損 a は水平線として描かれます。
一方で銅損は、変圧器の巻線に電流が流れることによって生じるジュール熱( 損)です。損失の値は電流の2乗に比例するため、変圧器の出力が大きくなるほど、銅損 b は急激に増加する曲線を描きます。
グラフを見分ける思考プロセス
試験ではグラフの形状から正解を絞り込むことになります。以下の手順で考えると効率的です。
- 鉄損 a が水平線になっているかを確認する 鉄損は負荷と無関係であることを思い出し、a が横軸と平行な直線になっている選択肢を探します。これだけで、選択肢ハを除外できます。
- 銅損 b が2次曲線になっているかを確認する 銅損は電流の2乗に比例するという知識に基づき、b が原点を通る右上がりの曲線であることを確認します。選択肢ロのような直線は誤りです。
- 最終判断 選択肢イは銅損が飽和するような形状をしており物理的に不適切です。選択肢ニは a が一定の水平線、b が2次曲線という条件を完全に満たしているため、これが正解となります。
電気設備設計における損失の重要性
この知識は、実際の電気設備設計において変圧器の最適効率を求める際に不可欠です。変圧器の全効率は、鉄損と銅損の合計が最小になるときに最大となります。具体的には、鉄損と銅損が等しくなる負荷率のときに効率がピークに達するように選定を行うのが理想的です。
また、変圧器を常時運用する場合には、無負荷時(軽負荷時)であっても常に発生し続ける鉄損を小さく抑えること(アモルファス変圧器の採用など)が、年間の省エネ性能を大きく左右します。この問題は、単なるグラフの読み取りを超えて、変圧器の運用効率を考えるための基礎的な素養を問う重要なテーマといえます。