平成30年度 第一種 筆記試験 問50 解説 電動機の配線本数
⑩で示す動力制御盤から電動機に至る配線で,必要とする電線本数(心線数)は。
- イ. 3
- ロ. 4
- ハ. 5
- ニ. 6 ✓ 正答
解説
必要な心線数を見抜くポイント
この問題は、動力制御盤から電動機に至る配線で、スターデルタ始動方式を採用した場合に必要となる電線(心線)の本数を問うものです。スターデルタ始動では、電動機を起動する際に、まずコイルをスター(Y)結線で接続して低電圧で始動し、その後デルタ(Δ)結線に切り替えて通常運転を行います。この切り替えのために、制御盤側で6本の電線が必要となります。
スターデルタ始動の仕組みと配線
三相誘導電動機は、通常3本の電線で電力が供給されます。しかし、スターデルタ始動を行う際には、電動機本体の端子箱での結線変更(スター結線とデルタ結線)と、それを制御するための回路が必要です。
電動機本体には、通常6つの端子があります。これは、各相のコイルの始端(U1, V1, W1)と終端(U2, V2, W2)に対応しています。スターデルタ始動では、これらの端子を制御盤からの配線によって、運転中にスター結線とデルタ結線を切り替えます。
- スター(Y)結線時: 3つのコイルの終端(U2, V2, W2)を短絡し、始端(U1, V1, W1)に電源を供給します。これにより、各コイルにかかる電圧が電源電圧の1/√3倍となり、始動時の過大な電流を抑制します。
- デルタ(Δ)結線時: 3つのコイルの始端(U1, V1, W1)と終端(U2, V2, W2)を、電源電圧を各コイルにかけるように順番に接続します。
この切り替えを行うためには、動力制御盤から電動機まで、以下の6本の電線が必要になります。
- R相: 電源のR相(またはU相)
- S相: 電源のS相(またはV相)
- T相: 電源のT相(またはW相)
- U2 (またはX): 電動機コイルUの終端
- V2 (またはY): 電動機コイルVの終端
- W2 (またはZ): 電動機コイルWの終端
制御盤では、これらの6本の電線を、タイマーなどの制御機器を介して、スター結線とデルタ結線に切り替えるための接点を持つ接触器(コンタクタ)に接続します。そして、電動機側では、これらの6本の電線を、端子箱でスターまたはデルタに結線できるように配置します。
思考プロセス:始動方式から配線数を判断する
この問題に解答するためには、まず「⑩で示す動力制御盤から電動機に至る配線」という記述と「電動機」という言葉から、動力用の配線であることを認識する必要があります。そして、動力制御盤から電動機への配線で、選択肢に「6」があることから、スターデルタ始動方式が疑われます。
もし、問題文や図(過去問の図面を参照した場合)に、スターデルタ始動を思わせるような配線図や、始動方式を示唆する情報(例えば、複数の接触器やタイマーが描かれているなど)があれば、それが判断の決め手となります。
一般的に、三相誘導電動機を直接始動(直入れ始動)する場合は3本の電線で済みます。しかし、始動電流が大きい電動機や、滑らかな起動をさせたい場合には、スターデルタ始動、インバーター制御、ソフト起動などの方法が用いられます。
スターデルタ始動は、比較的簡便な方法でありながら、始動電流を抑える効果があるため、多くの動力設備で採用されています。そして、その配線構成上、6本の心線が必須となります。
現場で活きる知識:電動機の種類と始動方法
この問題で問われている知識は、電気工事士の実務において非常に重要です。具体的には、以下のような場面で活用されます。
- 配線設計: 新規に動力設備を設置する際や、既存設備の改修時に、電動機の容量や使用条件に応じて適切な始動方式を選定し、それに伴う配線数を決定する必要があります。
- 施工: 選定された始動方式に基づいて、動力制御盤から電動機までの配線工事を行います。この際、必要な心線数以上の電線を敷設したり、逆に不足してやり直しになったりしないよう、正確な心線数の把握が不可欠です。
- トラブルシューティング: 動力設備に異常が発生した場合、配線図や制御盤の内部構成を確認し、問題箇所を特定するために、各電線がどの部分に繋がっているのか、そしてその心線数が何故その数なのかを理解していることが役立ちます。
この問題は、単に過去問を暗記するのではなく、「なぜ6本なのか」という原理原則を理解することの重要性を示しています。スターデルタ始動の仕組みを理解することで、他の始動方式における配線数との違いや、それぞれのメリット・デメリットも理解できるようになり、より応用的な知識へと繋がっていきます。