第一種電気工事士試験 / 平成30年度 第一種 筆記試験 / 問32
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平成30年度 第一種 筆記試験 問32 解説 計器用変圧器(VT)

③に示すVTに関する記述として,誤っているものは。

  1. イ. VTには,定格負担(単位[V・A])があり,定格負担以下で使用する必要がある。
  2. ロ. VTの定格二次電圧は,110Vである。
  3. ハ. VTの電源側には,十分な定格遮断電流を持つ限流ヒューズを取り付ける。
  4. ニ. 遮断器の操作電源の他,所内の照明電源としても使用することができる。 ✓ 正答

解説

この問題は、VT(計器用変圧器)の役割と用途を正しく理解しているかを問うものです。誤っている選択肢を見つけるには、VTが「何のために」使われるのか、その本質を把握することが重要です。

VTは、高圧回路の電圧を直接計測することが難しい、あるいは危険である場合に、安全な低電圧に変換して計器や保護継電器に供給するための機器です。この基本用途から逸脱しているものが誤りとなります。選択肢ニにある「所内の照明電源としても使用することができる」という記述は、VTの本来の用途から大きく外れており、不適切であると判断できます。

計器用変圧器(VT)の基本と役割

計器用変圧器(Voltage Transformer, VT)は、高電圧回路の電圧を、計測機器や保護継電器が扱える安全な低電圧(通常110V)に変換する機器です。電路の電圧を正確に測定し、それに基づいて系統の監視や保護を行うことが主な目的です。別名、計器用変流器(Potential Transformer, PT)とも呼ばれます。

VTは、計測精度が非常に重要な機器であり、その誤差を最小限に抑えるよう設計されています。そのため、接続される負荷(二次側機器)にも制約があります。

各選択肢の評価と詳細解説

ここで、各選択肢について詳しく見ていきましょう。

選択肢イ:定格負担(単位[V・A])の遵守

VTには、二次側に接続できる負荷の最大容量を示す「定格負担」が定められています。単位はボルトアンペア(V・A)です。この定格負担は、VTがその計測精度を保証できる二次負荷の範囲を示しており、これを超えて負荷を接続すると、計測誤差が増大したり、VT自身が過熱・損傷したりする原因となります。そのため、VTを使用する際は、接続する計器や継電器の総負担が定格負担以下になるように選定・使用する必要があります。この記述は正しいです。

選択肢ロ:定格二次電圧110V

日本のJIS規格では、計器用変圧器の定格二次電圧は110V(または115V)と定められています。これは、接続される電圧計、電力計、電力量計、各種保護継電器といった機器の定格電圧が110Vに合わせて設計されているためです。これにより、異なるメーカーの機器でも互換性が保たれ、安全かつ正確な計測・保護システムを構築できます。この記述は正しいです。

選択肢ハ:電源側の限流ヒューズの取り付け

VTの一次側(電源側、つまり高電圧側)には、必ず限流ヒューズが取り付けられます。これは、VT内部で短絡事故などが発生した場合に、事故電流を抑制し、故障部位を速やかに切り離すことで、事故の拡大や他の機器への波及を防ぐための保護措置です。高圧回路に接続される機器であるため、安全確保のために非常に重要な設備となります。この記述も正しいです。

選択肢ニ:誤りの理由 — 用途の逸脱

「遮断器の操作電源の他、所内の照明電源としても使用することができる」という記述は誤りです。

  • 遮断器の操作電源: VTは主に電圧の計測と保護継電器への供給を目的としています。遮断器の操作電源(トリップコイルや投入コイルの電源)は、一般的には専用の制御用変圧器(CTRV)や蓄電池(直流電源)から供給されることがほとんどです。VTから直接、遮断器の操作電源を供給することは、通常想定される用途ではありません。しかし、もしVTの二次側から制御電源を取るような場合があったとしても、それはあくまで「制御」の範疇であり、次に述べる「照明電源」とは性質が全く異なります。
  • 所内の照明電源: VTは、その精密な計測・保護という役割から、照明のような一般負荷や動力負荷を駆動する目的では使用されません。照明は比較的大電流を必要とし、点灯・消灯によって急激な負荷変動が生じます。このような負荷をVTに接続すると、VTの定格負担を容易に超過し、計測誤差の増大、異常発熱、さらにはVTの損傷や焼損につながる危険性があります。また、照明電源のような用途は、系統の電圧監視というVTの本来の目的とはかけ離れています。

したがって、VTの主要な機能は「高電圧の計測」と「保護継電器への電圧供給」であり、照明のような一般的な電力負荷を賄うことはできません。この記述が明らかに不適切であるため、「ニ」が誤りとなります。

この問題が問う知識と教育的意図

この問題は、第一種電気工事士として電気設備の実務に携わる上で不可欠な、計器用変成器(VT/CT)の基本的な役割と使用上の制約を理解しているかを確認しています。

  • 基本的な知識の確認: VTが何のために存在し、どのような機能を持っているのかという基礎知識を問います。
  • 安全と信頼性の理解: 定格負担の遵守、保護ヒューズの設置といった項目は、電気設備の安全かつ信頼性の高い運用に直結する知識です。これらを無視した使用は、重大な事故や計測システムの機能不全を招く可能性があります。
  • 用途の適切な判断: 特に選択肢ニは、機器の用途を正しく判断する能力を試しています。どのような機器も、その設計目的から逸脱した使用は避けるべきであり、これは電気工事士として非常に重要な判断能力の一つです。VTを照明電源として使用することは、安全性と信頼性の観点から決して許されません。

このような問題を通じて、単に知識を暗記するだけでなく、その知識が実際の現場でどのように活用され、安全な電気設備を構築するためにどのような意味を持つのかを深く理解することが求められています。


参考リンク

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