平成30年度 第一種 筆記試験 問3 解説 交流回路の瞬時値
図のように,誘導性リアクタンスXL=10Ω に,次式で示す交流電圧v[V]が加えられて いる。 v[V]=100√2sin(2πft)[V] この回路に流れる電流の瞬時値i[A]を表す 式は。 ただし,式においてt[s]は時間,f[Hz] は周波数である。
- イ. i=10√2sin(2πft-π/2) ✓ 正答
- ロ. i=10sin(πt+π/4)
- ハ. i=-10cos(2πft+π/6)
- ニ. i=10√2cos(2πft+90)
解説
この問題は、以下の2ステップで瞬時に解くことができます。
- 電流の最大値 を計算する。電圧の最大値 [V] なので、 [A] となる。
- 純誘導性回路では、電流は電圧よりも位相が 遅れるため、式に を加える。
これらを組み合わせると [A] となり、選択肢の「イ」が正解です。
誘導性リアクタンスと位相の基本
交流回路において、コイル(インダクタンス)を含む回路は、電流の変化を妨げようとする働きがあります。このため、コイルに交流電圧をかけると、電流は電圧よりも少し遅れて流れます。
純粋なインダクタンス成分(抵抗成分を含まない)のみの回路では、この位相差は正確に [rad](90度)になります。数学的には、電圧 が 波形であるとき、電流 はその最大値をインピーダンス(ここでは )で割った値となり、位相は に対して されます。
回路計算における瞬時値の扱い
問題文にある という式は、交流電圧が時間 とともにどのように変化するかを表す「瞬時値」の式です。ここから以下の情報を読み取るのが第一歩です。
- は電圧の最大値(振幅)
- は角周波数
オームの法則 は交流の瞬時値においても基本となりますが、位相のずれを考慮する必要があります。誘導性リアクタンス は、周波数 が高くなればなるほど電流を流れにくくする性質があります。計算式では単なる抵抗として と扱えますが、波形として表現する際は、「遅れ」という物理現象を という位相の引き算で記述することを忘れないようにしましょう。
現場で役立つ位相の感覚
この知識は、単に試験問題を解くだけでなく、実際の電気設備や制御回路の設計においても非常に重要です。
例えば、モータのような誘導負荷(コイル成分)が接続された回路では、電流の位相が電圧よりも遅れる「遅れ力率」が発生します。もし工場全体でモータを多用している場合、この位相の遅れが積み重なり、電力会社から供給される無効電力が増大してしまいます。現場では、この位相差を補正するために「進相コンデンサ」を取り付け、電圧と電流の位相を近づける(力率改善)作業が行われます。
この問題のように、計算で正確に位相を導き出せる能力は、将来的に力率改善の計算を行ったり、インバータ制御などの波形整形技術を扱う際の基礎的な素養となります。数式が単なる計算記号ではなく、電気の挙動そのものを表しているという意識を持つと、より深い理解につながるはずです。