平成29年度 上期 筆記試験 問31 解説 高圧ケーブルの選定
②に示す高圧ケーブルの太さを検討する場合に必要のない事項は。
- イ. 電線の許容電流
- ロ. 電線の短時間耐電流
- ハ. 電路の地絡電流 ✓ 正答
- ニ. 電路の短絡電流
解説
ケーブル選定の判断基準を絞り込む
高圧ケーブルの太さを決める際に考慮すべきは、通常時の過熱防止と事故時の熱的耐性の2点です。具体的には「許容電流」で日常的な負荷に耐えられるかを確認し、「短絡電流(短時間耐電流)」で万が一の事故時にケーブルが焼き切れないかを確認します。一方で、「地絡電流」は保護継電器の動作や接地設計に関わる数値であり、ケーブルの物理的な太さ(断面積)を決定する直接的な計算根拠にはなりません。したがって、不要なものとして「地絡電流」を選択します。
高圧ケーブル選定に必要な二つの視点
ケーブルのサイズを選定する際は、以下の二つの制約条件をクリアする必要があります。
- 電線の許容電流:ケーブルに電流が流れ続けたとき、絶縁被覆が劣化しない温度で安定して使い続けられるかを確認します。負荷電流に対し余裕を持ったサイズ選定が必要です。
- 電線の短時間耐電流:短絡事故が発生した際、保護装置が動作して遮断されるまでの短い時間に流れる過大な電流により、ケーブルが熱的に損傷しないかを確認します。このとき、事故電流の大きさと遮断までの時間がケーブルの断面積に影響します。
これらは、どちらかが欠けても適切な設計とは言えません。許容電流だけで選ぶと事故時にケーブルが溶断するリスクがあり、短時間耐電流だけで選ぶと日常の負荷でケーブルが過熱する可能性があるためです。
なぜ地絡電流は対象外となるのか
地絡電流は、電路の絶縁不良などが原因で大地に漏れる電流を指します。この電流値は、主に電源側の接地方式や配線の対地静電容量によって決定されます。
地絡電流に対する保護には、地絡継電器(GR)や地絡方向継電器(DGR)といった保護装置が用いられます。これらの保護装置は、地絡電流を検知して遮断器をトリップさせるためのものであり、ケーブルの断面積を太くして地絡に耐えさせるという発想は一般的ではありません。地絡事故は極めて短時間で遮断されることが前提であり、また、短絡事故に比べて電流値が小さくなる傾向があるため、ケーブルの物理的サイズ選定の主要な判断要素には含まれないのです。
設計における位置づけと試験のねらい
実務においてケーブル選定を行う際は、カタログスペックや内線規程に基づき、負荷予測から許容電流を求め、計算された短絡電流値から最小断面積を算出します。このとき、保護装置がどれくらいの時間で事故を遮断できるかという遮断時間も重要なパラメータとなります。
試験においてこの問題が出題される意図は、受験者が「電流」という言葉を安易に混同していないかを問うことにあります。負荷としての電流、故障としての短絡電流、そして漏電としての地絡電流。これら各電流がどのような物理的影響を電気設備に与えるのか、そのメカニズムを整理しておくことが、選定ミスのない設計者への第一歩となります。