平成24年度 筆記試験 問18 解説 電力ケーブルのシース損
電力ケーブルのシース損として、正しいも のは。
- イ. 導体の抵抗による損失である。
- ロ. 導体と金属シースとの静電容量による損失である。
- ハ. 絶縁物の劣化による損失である。
- ニ. 金属シースに発生する起電力による損失である。 ✓ 正答
解説
シース損とは、ケーブル内部の導体を流れる交流電流によって、周囲の金属シースに誘導電流が発生し、その抵抗によって生じる熱損失のことです。選択肢の中から「金属シースに起電力が発生して電流が流れる」という現象を述べているものを探すのがこの問題の解き方です。
シース損が発生する物理メカニズム
電力ケーブルには銅やアルミの導体がありますが、その外側には通常、鉛やアルミ、銅テープなどの金属シースが被覆されています。
交流電流が導体を流れると、その周囲に変化する磁界が生じます。この磁界が金属シースを貫通することで、電磁誘導の法則(ファラデーの法則)によりシースに誘導起電力が発生します。もし金属シースが両端で接地(ボンディング)されて回路が閉じていると、この起電力によってシースに電流(シース電流)が流れます。このシース電流が金属シース自体の抵抗によって熱に変わり、エネルギーが失われる現象をシース損といいます。
正誤判断の思考ステップ
この問題を解く際は、言葉の定義を整理することが重要です。
- 導体の抵抗による損失:これは「導体損」と呼ばれます。イの選択肢はこれに該当します。
- 静電容量による損失:これは絶縁体の「誘電体損」に関係する概念です。ロの選択肢はシース損ではありません。
- 絶縁物の劣化:絶縁破壊や経年劣化による漏れ電流などを指します。ハの選択肢もシース損とは異なります。
- 金属シースの起電力:前述の通り、電磁誘導によってシースに電流が流れる仕組みそのものです。これが正解の根拠となります。
なぜこの知識が必要なのか
実務においてシース損は、ケーブルの許容電流を決定する際に非常に重要な要素です。シース損が発生すると、その分だけケーブルの温度が上昇します。温度が上がると許容電流は低下するため、エンジニアはケーブルの敷設設計を行う際、シース損を考慮に入れて、熱がこもらないような接地方法(クロスボンド法など)を採用します。
試験でこの知識を問う意図は、単に用語を暗記させるだけでなく、ケーブルの損失が単に抵抗値だけで決まるものではなく、電磁誘導という物理現象が損失を生み出すという「システムの全体像」を理解しているかを確認するためです。大電流を扱う高圧・特別高圧ケーブルの設計において、この損失をいかに抑制するかが電力効率を高める鍵となります。