平成23年度 筆記試験 問21 解説 高圧進相コンデンサ
容量 100〔kV・A〕、力率 80〔%〕(遅れ)の負荷を有する高圧受電設備に高圧進相コンデンサを設置し、力率を 95〔%〕(遅れ)程度に改善したい。必要なコンデンサの容量 Qc〔kvar〕として、適切なものは。 ただし、cos θ₂ が 0.95 のときの tan θ₂ は 0.33 とする。
- イ. 20
- ロ. 35 ✓ 正答
- ハ. 75
- ニ. 100
解説
コンデンサ容量 を求める計算式 を活用します。まず、負荷の有効電力 を算出します。次に、力率80[%]から を求めます。これらを式に代入すると となり、選択肢の中で最も近い値を選びます。
力率改善のメカニズム
交流回路における負荷の「力率」とは、見かけの電力(皮相電力)に対する有効電力の割合を指します。モーターなどの誘導性負荷は、コイルの性質により遅れ無効電力()を消費します。この無効電力は電線路を流れ、電圧降下や損失の原因となります。
ここに、進み無効電力を発生する進相コンデンサ()を並列に設置すると、負荷の遅れ無効電力を打ち消すことができます。結果として、電源側から供給すべき無効電力が減少し、全体の力率が改善されます。この計算において、有効電力 は一定のまま、無効電力の差分だけをコンデンサで補うという考え方が重要です。
計算を導く手順
試験でこの問題を解く際のステップは以下の通りです。
- 有効電力 を求める:皮相電力 と力率 が与えられているため、 で算出します。
- 改善前の を求める:力率が与えられている場合、 を利用して を計算します。この問題のように力率が0.8であれば、必ず0.6/0.8 = 0.75となるため、覚えておくと時間の節約になります。
- 公式に当てはめる: に値を代入します。 は問題文から与えられる場合がほとんどですので、焦らず問題文を確認してください。
実務における力率改善の意義
この問題で扱っているコンデンサの設置は、実務において極めて重要な役割を果たします。電気料金の基本料金は契約電力で決まりますが、力率が85[%]を下回ると基本料金が割り増しされ、逆に100[%]に近づけることで電気料金の割引制度(力率割引)が適用されます。
また、力率を改善することは、配電線路に流れる電流を減少させることと同義です。電流が減れば、電線路での電圧降下を抑制できるだけでなく、送電損失(損失)も小さくなります。設計現場では、単に料金を安くするだけでなく、設備の容量を有効活用し、安定した電圧を維持するために、この計算を用いて適切なコンデンサ容量を選定しています。